<議事録>
○大門実紀史君 お二人、お忙しい中、ありがとうございます。日本共産党の大門でございます。
山影先生にまずお伺いいたしますけれども、東アジア共同体、私は実現してほしいという立場で、実現させるならという前提で御意見を伺いたいと思いますが、東アジア共同体に向けて、今、今日もお話ありましたが、二国間FTAというのが注目されているところですけれども、ただ、これは一つの手段にすぎないといいますか、あちこちFTA結びさえすれば共同体に行き着くというものではないというふうに思います。例えば、今も原産地規則とか、あれにコストが掛かるとか、AとBという国が結んだらCの国がどうなるんだとか、いろんなことがもう出ているところです。そういう点では、何といいますか、この間は特に日本の企業が輸出を拡大するということがぐうっとイニシア発揮して、FTA、FTAとなっているところありますけれども、企業利益の追求だけでは限界、共同体構想に行き着くには限界に突き当たるんではないかと思っております。
つまり、FTAというのは二国間の線でありまして、これが面といいますか、自由貿易地域もそうですけれども、この地域といいますか面に行くには、今のFTAだけを一杯結べばということではなくて、もう少しいろんなアプローチが必要ではないかと思う点で、一つは、この間の議論でも聞いたり申し上げたりしているんですが、国家間のプロジェクト的なもの、例えば通貨は先ほどもお話がありましたけど、そうはいってもちょっと前進をしてたり、通貨面ではしておりますよね。あるいは石油の共同備蓄だとか、いろいろ国家間でのプロジェクトみたいなものがこれから必要じゃないかと。
もう一つは、何といいますか、国民同士の共同といいますか、例えば農業問題で、先生のレジュメに第三の開国というのがありましたけれども、ちょっとお話、詳しく聞く時間ありませんでしたけど、私は日本の農業はもう十分開国されていると、数字的にはそう思っております。それ踏まえた上でいくと、政府が言っている、もっと農業の構造改革進めろというのも若干薄っぺらな気がいたしますし、東アジア諸国の食料自給率を見ると、そう簡単に開国、開国といかない部分があります。それと、メジャーのアグリビジネスの問題があります。
そういう点でいくと、ちょっと理想的かも分かりませんが、アジアの人たちの今の農業と日本の農業とが協業する、分担をするとかそういうこと、両方の農民が、農家がやっていけるような、そういう協業をやるような構想とか、あるいは先ほど朴先生言われましたけど、単純に外国人労働者を受け入れることがその国にとって、看護師不足の問題とかどうなのかという国民の目線で共同を、アジア共同体というものを見ていかなきゃいけない、そういうレベルになってくるんじゃないかというふうに思うんですけれども、その辺の御意見あればお聞かせいただきたいと思います。
朴先生には、忌憚のないお話をありがとうございます。制裁より援助、貿易の拡大もという点、大変重要な点だと思います。この点で、韓国の取ってきた太陽政策、これそのものをどう評価されているか、あるいは具体的にどういう効果が生まれているかという点、分かれば、分かる範囲で教えていただければと思います。
○参考人(山影進君) どうもありがとうございました。
私も、東アジア共同体が実現していく上で、企業のロジックには限界があるというのは全くそのとおりだと思います。例えば、これは国家間プロジェクトと国民間プロジェクトの中間のようなことかもしれませんが、今、日本はASEAN諸国に対していわゆる草の根・人間の安全保障支援というのを始めているのは御案内のとおりだと思いますが、あれも政府間というよりは現地がイニシアティブを取る、NGOが参加するということで、政府間の視点よりははるかに住民あるいはその地域社会に根付いた視点で日本と東南アジア諸国の関係が緊密になっていくということが進んでいるんだと思います。
それから、農業問題に関しては、日本の農業が十分開かれているかどうかというのは、多分、基本的には米の問題に行き着くのではないかと思いますが、FTAを結ぶときに、現在農水省が非常に外向きになっていることから分かるように、日本の、ある意味では広く農産品をとらえると競争力が非常にあると。ところが、例えば中国に日本が事実上輸出できるのはたしかリンゴとナシぐらいで、ほかの果物は非常に関税が高いとか、台湾、台湾は主権国家ではないので若干話題がずれてしまうかもしれませんけれども、日本のお米あるいは日本酒、お酒に対する需要が非常に高いのに関税が高いとかですね。
実は、その農業問題というのは日本だけじゃなくてどの国も選択的な保護をしているわけでありまして、そういったものを相互に開放して、お互い工業製品で産業内貿易というのはこれは常識になっているわけですけれども、東アジア共同体を語るときには、農業も、ある国が輸出国で、ある国が輸入国ではなくて、農業という産業の産業内貿易が非常に進展するんだということが東アジアの一つのイメージではないかと思います。
例えば、そういうことを円滑化するために今、私、必要だと思うのは、動植物の検疫制度の標準化、高い水準のその規制というのがやはり日本人の食生活のためには必要でありまして、実はこれは私、昨日聞いただけの話ですが、日本はアメリカからもちろん牛肉を輸入していないし、肉骨粉も非常に制限的に入れていると。ところが、中国はそういうような制限を掛けていなくて、アメリカからどんどん肉骨粉を輸入していると。じゃ、中国で育った牛肉はどうなのか。まだ入ってきていませんけれども、近い将来、FTAが線の関係であるのと同じように、安全規制あるいは動植物検疫というのはこれは基本的に一国ベースでありまして、抜け道はあちこちにあると。これは、日本の行政府でいうと、農水省の所管の問題と厚生労働省の所管の問題がいろいろとぶつかって、私よりも先生方がよく御存じだと思いますけれども、そういうところもクリアしながら、東アジア共同体がもしできるときには、単に自由化だけではなくて、そういう本当に物の流れが円滑にいくような円滑化制度というのは、これはやはり是非整備していかなければいけないことだというふうに思っております。
○参考人(朴一君) 金大統領の太陽政策をどう評価するかということですけれども、金大統領の太陽政策を継承して盧武鉉大統領は平和繁栄政策という、名称を変えて同じような北に対する政策を展開しているんですけれども、この基本的な考え方というのは、北朝鮮の硬直的な経済システムを解体させて、北朝鮮を中国のような改革・開放に向かわせていくということに大きなねらいがあります。
北朝鮮自身が、私は北朝鮮の経済というものを専門的にちょっといろいろ研究しているんですけれども、大体一九八〇年代後半から、いわゆる主体思想というのがございますけれども、政治の自主、経済の自立、軍事の自衛という、自主、自立、自衛というのがその主体思想の根本なんですけれども、北朝鮮経済のネックになってきたのは、この経済の自立というものをどう解釈するかということをめぐって随分軍部と改革派の中で駆け引きがあったと言われています。
それで、北朝鮮が大体一九九〇年を前後してどんどんこの経済の自立という部分を拡大解釈してきまして、いわゆる基本的には経済の自立というものは、金日成主席が生きていたときは外資導入、特に西側からの外資導入というのは禁じられてきたわけですね。ところが、これが九〇年以降、金正日さんがこの主体思想の唯一の解釈権を持っているんですけれども、この中で憲法を改正して外資導入を認めるような、例えば外資導入法を設置したり合弁法を作ったりしながら、徐々に徐々に外資拡大の道を切り開いてきたと。
そして、この北朝鮮が二〇〇二年七月からついにこの大きな改革・開放の取組を始めたということで、特に大きなものは配給制の廃止ですよね。この配給制というのは、恐らく先生方も御承知のように、社会主義システムのベースというのは配給制だったんです。その配給制を廃止したということは改革・開放にまず大きく歩み始めたということですが、ただ、配給制の廃止というのは、表向きはきれいに聞こえますが、実際は配給するだけの物資もなくなってしまったというぐらい北朝鮮は厳しいということなんですよ。
ただ、その配給制が廃止されて、実利主義の観点から例えば物価や賃金の見直しがどんどん進められているという。これまで、例えば改革では、例えば企業が商品が売れても売れなくても八割の賃金は保証されたりしたんですけれども、これからは、その保証金制度というのがあったんですが、それも廃止されて、労働者に対しては収益に応じてより多くの報酬が受けられるような成果主義が北朝鮮でも導入されるようになってきたんですね。そういう意味で、政府、企業、労働者がある意味ではリスクを平等に負担しながら労働に対するインセンティブを高めていこうというような、ある意味での中国式の改革・開放路線に徐々に北朝鮮は移行しようとしていると。
韓国は、その太陽政策で、こういった北の改革・開放を支持するために、軍事境界線の北側に開城の工業団地という、開くって書いて城というところがあるんですが、この開城の工業団地に、韓国の企業と土地公社が北朝鮮政府から六十六平方キロの広大な土地を五十年間無料で借り受けて、ここを開発していくということで、二〇一二年にはここに韓国の企業が一千社が入居して、十万人以上の北朝鮮の労働者をそこで雇用するというような構想が出ているわけです。
こういうふうな、韓国は太陽政策、いわゆる平和繁栄政策と現在名称は変わっていますが、こういった政策を通じて北朝鮮の改革・開放を側面的に支援しながらソフトランディングさせていこうという政策で、私はある意味でこの政策というのが実ってきたのかなという気はするんですけれども、残念なことは、二〇〇〇年に金大中大統領が北朝鮮に行かれて、いわゆる南北共同宣言というのをやって、そこでこういった構想がどんどん出たにもかかわらず、やはり二〇〇二年に小泉首相が行ったときに拉致問題で日朝関係が硬直してしまったために、結局日本からほとんど経済協力の金も入ってこなかったし、現在そういった事情で日本から全く企業も入ってこない状況になっていますから、やはり韓国単独で北朝鮮の改革・開放を進めていくのは限界があるのかなと。だから、何とか私は、この拉致問題を克服しながら、北を改革・開放して、西側世界の仲間入りをさしていくような努力も必要なのではないかなというふうに考えています。
以上です。