<議事録>
○大門実紀史君 日本共産党の大門でございます。今日はお忙しいところ、ありがとうございます。
日本共産党の大門でございます。今日はお忙しいところ、ありがとうございます。
先生のレジュメの二ページの6)のところ辺りをもう少し詳しくお聞きしたいということでありますけれども、ドイツとフランスが歴史的敵対者であったのが協調と発展してきたというところに、特に日中も、東アジアの地域協力進めていく上で日中も学ぶべきではないかというようなことの部分であります。南京で抱き合えるかどうかは別として、このドイツとフランスの歴史というのをどう学ぶのかということですけれども。
以前読んだ本に、その下の方にも書いていますが、フランスのシューマン外相が提案した石炭と鉄の共同管理ですね。つまり、これはドイツとフランスが、何といいますか、それでお互い経済的効率性を高めるとか、経済的利益を生むというよりも、むしろ長い歴史で戦争ばっかりやってきた二つの国を、経済的利益というよりも、もう二度とけんかしないようにといいますか、けんかができないようにするためのというような、政治的な共同といいますか、そういうものを目的としてこの石炭と鉄の共同管理がやられたと。ジャン・モネさんですかね、なんかが頑張ったという、そういう非常に感動的な部分の本を読んだことがありますけれども。
つまり、EUの歴史の出発点、ドイツとフランスの共同が決定的だと思うんですが、経済効率性よりももっと違う価値をやはり求めようというものがあったんではないかと思います。そういう点では、社会憲章にしろリスボン宣言にしろ、ただ経済効率を追求するんじゃなくて、何といいますか、人間を資産として位置付けて人間を大事にするような経済発展ということが、アメリカなんかの経済効率一辺倒とは少し違うところがあるということだと思います。
そういう点を踏まえて、日中問題でも、今はお互い金もうけにわあっと走っているというのがありますが、こういう歴史的な共同を果たすときに、やはりそれ以外の価値で日中も踏み越えて違うもので考えていくということが求められているのかなと思いますので、このレジュメのこの部分をもう少し詳しくお聞かせいただければというふうに思います。
渡邊先生には二点端的にお伺いいたしますけれども、アメリカとEUの安全保障観、外交の方向性の違いで、特にテロリズムに対する問題で、ヨーロッパの方はよくテロリズムの根底にあるのはパレスチナ問題だということを度々言及しているのをいろいろなもので読みます。つまり、イスラエルの占領地域のパレスチナ人居住地でこの何年間で千人以上が死ぬとか、死亡するとかいろいろなことが起きて、要するに、イスラエルのパレスチナに対するこの仕打ちといいますか、そういうものが問題であるというヨーロッパの意識があるのではないかと。それに対して、ブッシュ大統領の方はイスラエルにちょっと肩入れをし過ぎじゃないかと。この辺がEUとアメリカとのテロ問題解決に向けたスタンスの違いかなというふうに私は思っているんですが、その辺、先生の御意見、あるいは、今そのパレスチナ問題をめぐってアメリカとEUがどういうふうなやり取りをしているか、御存じのことあれば教えていただきたいと思います。
二つ目には、アメリカのミサイル防衛構想でありますけれども、これは具体的には、EUの中のグリーンランドですからデンマーク領ですか、とイギリスに支援基地を今のところの構想だと置かなければ成り立たないという構想になっていますが、EU全体としてはアメリカのミサイル防衛構想に冷ややかな反応をしているんじゃないかと思います。そういう点で、そのミサイル防衛構想等に対するEUの今現在どういうやり取りがされているのか。私専門家ではないものですから、いろいろ聞きかじっているだけですので、分かる範囲で教えていただければと思います。
以上です。
○参考人(羽場久シ尾子君) ありがとうございました。
一点目の、独仏の和解に日中も学ぶべきである、そして何を学ぶかということなんですけれども、そうですね、経済効率ではない側面があるのではないかということなんですけれども、面白いのは、ヨーロッパというのはとてもプラグマティックな部分と理想主義とが両方結び付いているのではないかと思うんですね。ですから、単に平和というだけではなくて、平和と経済発展を結び付けようというところで、平和主義者だけではなくて経済発展を望む企業家やあるいは市民や投資家もこれに連動して入っていくという部分があるように思います。
その意味では、やはり石炭と鉄、当時にとって戦争の最大の根源であり、現在であれば石油であったりあるいは核であったりするものを、すべて共同で管理することによってともに発展しようというプラグマティズムは非常に面白いと思うんですね。正にアルザス・ロレーヌというのはその石炭、鉄鋼の地域を取り合うことによって長年戦争を続けてきたわけですから、これをむしろ日中と言わず現在中東に応用して、石油というものを共同管理することで地域統合がつくれないかというのは物すごく面白い提案であると思いますし、また、アジアの地域において現在EUはKEDOなんかにも非常に積極的にかかわっていますけれども、北朝鮮の核をむしろ平和利用するというところで日本も中国もかかわっていくというような、非常にプラグマティズムと理想主義を結び付けて関与することによって自分にも利益が返ってくるというような部分というのは、正に学ぶべきかなというふうに今回思いました。
先ほども言いましたように、南京で抱き合うということは完全に許し合うことではなくて、むしろそこで手をつなぐことによって、そこから第二段階の問題として靖国の話合いがあったりあるいは北方領土の話合いがあったりというところでのディプロマシーの巧みさというような部分は、日本でも学んでいい部分ではないかと思います。
それから二点目に、一言だけですけれども、現在EUは多極の世界秩序を言う中で、今回、EU会議にも大量のアラブ人、パレスチナからの人々とイスラエルからの人々も呼んでいましたけれども、EUのスタンスは、やはりイスラエルの国際法無視に対してきちんと国際司法裁判所で対応していくべきだということは言っています。それをヨーロッパ内やあるいはイスラエルのユダヤ人がEUは反ユダヤ主義だというような言い方もしたりはしているんですけれども、この点は多分、理念を超えて、歴史的にパレスチナ問題はEU、ヨーロッパの人々の政策によって始まったというその原罪認識みたいなものをかなりヨーロッパ人は意識しているのかなというふうに思っております。
以上でございます。
○参考人(渡邊啓貴君) 御質問ありがとうございました。
最初の羽場先生の、主に羽場先生に対する御質問であったかと思いますけれども、日中と独仏をアナロジーで考えるときに、やっぱり戦後の復興、独仏の歩み寄りというのは戦後の復興だと思うんですね。マーシャル・プランの一環と言うこともできますし。それは、アメリカが自分の将来競争相手になりそうなヨーロッパの統一というのをアメリカでは議論して、それを承知の上で援助した。まあそれは当時のアメリカの度量の大きさあるいは自信だったんだと思いますけれども。
そういう状況をやっぱり日中はつくれないですね。違いを強調するのは良くないと言いながら、こういう言い方をするのはあれですけれども。だとすれば、そういうふうな共通目標をどうやってつくっていくかという作業になるのかもしれません。そういう意味では、先ほどの東アジア共同体というのを、日本が先か中国が先かとか、特に東アジア安全保障共同体のときですね、そういう忠誠心競争みたいなようなことにはならない方がいいなと思います。
それから、米欧の安全保障観で、おっしゃられるとおりだと思います。特にパレスチナの問題あるいはテロの問題というときに、これはもうずっと常々言われていることですけれども、貧困との闘いということを言われますね。必ずしも人間、物質的に豊かになれば戦闘能力が減じる、それでいいのかということにもなりますけれども、基本的にはやはり、必ずしも民族の伝統とか主義主張だけでは収まらないこういったテロ活動、反米活動あるいは反秩序活動というのはあろうかと思います。
そういう意味では、先ほど人間の安全保障という言葉を使いましたけれども、EUはこの安全保障問題のときによく言われる、彼らが強調するのは自分たちはヒューマンなヒューマンなと、ある意味ではきれい事で、また始まったと私なんか思いますけれども、同時に、やっぱり言い続けることはやはり重要なんだなというふうにも思います。せんだって、あるEUのフィンランドの職員と話していましたら、スローで、ゆっくりで堅実なやり方を自分たちは取っているんだ、目には見えにくいけれども、アメリカの方がすぐ分かるやり方を取るけれどもというふうなことを言っておりました。これは、この冷戦以降の流れでかなり根強い彼らの了解事項だと思います。
それからもう一つ、EUの場合に、すぐEU、EUと言いますけれども、実はアメリカが先に来て軍隊を派遣していてもう対応していた、EUは後から来た。確かに形の上ではそうなんですけれども、じゃ、EUの各国は、二か国でそれぞれ自分の親しい国とか地域があるわけですから、EUの代表団が来たり職員が来る前に、もうそこに親しい国がもう既に来ている。例えばフランスとアルジェリアとか、この間のアフリカでの問題なんかでもありますように、そういう単にEUとしてだけ扱えないような個別の国の対応が実はある。これが複雑に入り交じっていると思います。同時にまた、これがEUのそういった平和的で堅実な動きをある意味で二国間レベルでサポートしているようなところもあると。ただし、これは非常に見えにくいところでありますけれども。
それから最後の、MDの、ミサイルディフェンスの話。申し訳ございません、私勉強不足で最近の事情を追っておりませんけれども、ただ、EUとかNATOの会議なんかに出るときにはこのプライオリティーは随分減っているようには思います、話題に余り出ないと思います。特に最初に、ブッシュ政権の第一期政権のときにはこれがすごく出ましたよね。ブッシュ政権が単にミサイル防衛じゃなくて、ナショナル・シアター・ディフェンスって、国防ということを言い出したものですから、それに巻き込まれるということで。
そういう意味では、イラク戦争を挟んで、少しミサイル、ただし、これは基本にあるのは脅威認識の違いだと思います。もちろん、旧中東等からミサイルがヨーロッパに飛んでくるとかそういうことも考えられないわけですし、そういう脅威認識が基本的に地理的な意味でも違いますし、また、これは最初の問題にくっ付きますけれども、その対応が当然違ってくるわけで、冷ややかで反対の底流はずっと残っておりますけれども、ちょっと私最近フォローしておりませんけれども、余り耳に聞かないことだなと思います。
そういう意味では、例えば象徴的なのは独仏がそうですけれども、イラクの治安にフランス、ドイツは直接に貢献はしないけれども、イラク人の警察の養成を国外で行うと。イラクの中でやるのではなくて、イラクの外で自分たちはそういう訓練をすることには大いに積極的になろうというふうなことを言っておりまして、もう進んでいると思いますけれども、というようなことでございます。
○会長(松田岩夫君) 羽場参考人、もう一度、じゃ。
○参考人(羽場久シ尾子君) 済みません。
ロシアの核ミサイルないしは核弾頭の問題で追加の発言なんですけれども、御存じのように、カリーニングラードというロシアの領土で、現在ポーランドとリトアニアに挟まれている地域、地図上でも確認できますけれども、ポーランドとリトアニアの間に挟まれている白い部分がカリーニングラードという地域で、これはヨーロッパの北方領土とも言われまして、第二次世界大戦のときまでドイツの領土であった東プロイセンの元々の領土です。
これが現在ロシア領として、バルト三国が独立したときにEUの中のロシアとして残されているんですけれども、ここで、二〇〇一年の一月にカリーニングラードに核配備がなされたというのをフォーリン・アフェアーズがすっぱ抜いて一時大問題になりました。これはやはりロシアが、EUの拡大はいいけれどもNATOの拡大は我々の領土を脅かすものだということで、現在でも非常にNATOの拡大には反発しておりますけれども、それに対する一つの行動の出方だったとも言われます。
実際に核を配備したか配備しなかったかというのはうやむやなまま報道は終わってしまいましたけれども、この地域、元々、冷戦期には二十万人のバルチック艦隊が駐留していたところでもありまして、この地域をどう今後処遇するかというのは極めて重要な問題になっています。
ここでもNATOとEUはかなり違うスタンスを取っておりまして、EUはカリーニングラードをEUの経済圏の中に包摂すると。これは一時、ロシアのノブゴロド州の市長からも、カリーニングラードだけEUに入ってもいいんじゃないかという話がロシア側から出て、いやいや、それは待ってくれとEU側はとりなしましたけれども、そう言われるほどに、現在EU側からの投資やフォルクスワーゲンの合同の工場ができたりというような形で経済的には進んでおります。
他方で、ロシアにとっては最も最西端の軍事基地ということでもございまして、現在この地域はもちろんNATOも触れられないロシア領土として核を含む様々のロシア艦隊が駐留しているということもあり、アメリカのミサイルの防衛構想と直接ではありませんけれども、NATOにとってのど元に刺さった骨のような形でカリーニングラード問題が現在でも存在することがございます。
以上でございます。