<議事録(未定稿)>
○大門実紀史君 大門実紀史です。
内閣委員会では新人でございますので、よろしくお願いしたいと思います。
今日は、耳が聞こえにくい、聞こえない、難聴、聾者の方々への支援について質問をいたします。
現在、日本でデフリンピックが開催されている真っ最中でございます。二十六日までということで、手話や難聴の問題に関心が高まっているところでございます。
また、今年六月に手話施策推進法がこの内閣委員会で全会一致で成立をいたしました。今井絵理子さん含めて、各党の皆さんの御尽力に敬意を表したいというふうに思います。ただ、これからが重要でございまして、引き続き、党派を超えて具体的課題の前進に、実現に取り組んでいきたいと思います。
実は、先日、東京のある聾学校に伺ったら、お母さんたちの訴えがございました。聾学校の同じクラスの中で、補聴器を購入する際に国からの補助が受けられる子供と受けられない子供がいると、おかしいんじゃないかと、是正してほしいという訴えでございました。
同じ聾学校に通う子供たち、もちろん聞こえのレベルは様々ではあるんですけれど、ただ、どの子供も、どんなレベルでも、最低補聴器の装着というのは必要なわけでございます。なぜ国からの補聴器購入の補助を受けられる子供と受けられない子供がいるんでしょうか。説明をお願いします。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
御指摘の聾学校に通われているお子さんの補聴器の支給の関係の制度は、障害者総合支援法による補装具費支給制度、この制度が根っこにあるものでございます。この補装具費支給制度でございますけれども、障害者及び障害児の方々の身体機能を補完ないしは代替する用具として、補聴器を始めとする補装具の購入などに要する費用の一部を支給をしているところでございます。
この制度の補聴器の支給対象者は、支給対象者でございますけれども、障害児の場合には、聴覚障害六級以上として身体障害者手帳が交付される高度難聴及び重度難聴用の補聴器が必要な方、あるいはそれと同程度であると医師の意見書が出された方とされております。
ですので、こうした聴覚障害六級以上に該当するか、ないしはそれに準ずるとしてお医者さんの意見書が出ない方、これに該当しない場合には本制度の対象外となっておりますので、恐らく先生がお聞きになられたその子供によって対象になるかならないかというのはこれのことかと存じます。
○大門実紀史君 お手元に資料をお配りいたしましたけれども、今、厚労省から説明あったのは障害者認定ですね。七十デシベルという、聞こえづらさが左側に聴力のレベルがありますが、高くなるほど重度なんですけれども、七十デシベル以上になりますと、障害者認定六級、手帳が交付されて六級になるわけですね。で、補聴器の補助も受けられると。
ところが、聾学校に通っている子供たちは、この七十以上だけじゃないんですね。もう五十から六十ぐらいの子供たちが実際には通っております。例えば六十デシベルだと、普通の会話は聞き取れません。補聴器を付けても聴者の半分ぐらいも聞き取れるかどうかというので、手話で補うしかないというようなのが実情でございまして、その聞こえは、この重度とかレベルあるんですけれども、補聴器だけはもう五十以上は聾学校に通っている子供はもう必須になっているのに、こんなところで区別しているんで、補助を受けられる子供、受けられない子供がいるということなんですね。
これはやっぱりおかしいんじゃないかと思うんですよね。同じ学校で、同じクラスで、みんな補聴器必要なのに、受けられる子、受けられない子がいて、これはある意味では義務教育における教育の機会均等を奪うことにもなると。つまり、補助が受けられない、高いですよね、補聴器ですね。それで、事情があって買えないと、付けて学校、付けられないと、で、授業を受けるというような差別にもつながっているわけでございます。
これ、大変な問題だと思っているんですけれども、まず、七十デシベル以上というのは、これ国際的に見て、海外はどれぐらいのレベルからこういう補助をしていますか。
○政府参考人(野村知司君) 今お尋ねがございましたよその他の国、諸外国において聴覚障害についてこういった認定の基準があるかどうかということについては、把握を、特に総覧的に把握をしているものはございません。
我が国の聴覚障害者の認定基準では、身体障害者福祉法の方で、御指摘ありましたように、両耳聴力レベルがそれぞれ七十デシベル以上の方など、聴覚機能に重度の障害のある方を身体障害者として支援の対象としているところでございます。こちら、医学的な観点からの身体機能状態を基本としつつ、日常生活の制限の程度により定めているということで、これを身体障害の定義としているところでございます。
○大門実紀史君 把握していない、本当そのものが、海外のいろんな何とか省ありますが、それぞれ海外のレベルってみんな把握していますよ。
例えば、私の方で調べましたけど、これ簡単に調べられるんですよね、今ね。WHOも出しているんですよ。答えられないというか、答えたくないのか分かりませんが、一応言っておきますと、アメリカは、社会保障給付を受けられるレベルは六十デシベル以上でございます。ドイツの社会参加給付は五十デシベル以上でございます。イギリス、デンマーク、ノルウェーは、WHO基準に合わせて四十一デシベル以上は対象になっております。
そもそも、障害者というよりも、これは医療、医療の支援だと、保健の支援だということで、健康保険から出す場合が多いんですが、いずれにせよ、当たり前のように補聴器必要ならば支援するというふうになっているわけですね。七十デジベル以上というのは、もう日本だけじゃないというぐらい厳しい基準でございます。
なぜ、これは、WHOの基準というのはどういうふうに決められているかというと、聴力レベルと社会生活の実態に基づいて難聴の程度を分類しておりまして、あくまで当事者の立場に立って、聴力の低下が日常生活に与える影響を客観的な数値で表して、こういう表のような、右側ですね、WHOの基準を決めているわけです。それに応じて各国は支援すべきだということ、グローバルな指標として設定しているわけですよね。
書いてあるとおり、WHOでは四十一デシベル以上は補聴器必要だと、支援すべきだということがあるわけですが、なぜ日本はWHOの基準に合わせないんですか。
○政府参考人(野村知司君) 御指摘のWHOの基準、幾つかどうもバリエーションがあるようでございまして、先ほどちょっと、各国の基準について手元にないと申し上げたんですけど、WHOのスタンダードによって、軽度、中等度、やや高度、高度、重度、完全な聴覚喪失と六区分で区分しているようなスタンダードもあるというふうに承知をしております。
そうした中で、我が国の身体障害の基準でございますけれども、これは難聴の区分というWHOが示したような考え方とは違いまして、聴覚障害の区分ということで設定をしているということもあります。そういう意味では、医学的な観点からの身体障害の状態というのを基本としながら、日常生活の制限の程度により決めているという、こういった難聴という概念か障害という概念かという違いが根っこにあるということはございます。
そうした中で、WHOの基準なり諸外国の範囲に準拠するかどうかということは、やはりそれはそれぞれの国で設けている制度の下で、どのような対象者の方にどのような施策を講じるのかであるとか、あと、いわゆる福祉と言われる制度の中の仕組みの違いでございましたりとか社会的な背景の違いなどがあることから、なかなかそろえるというふうなことにはなっていないと、そういう状態でございます。
○大門実紀史君 そもそも、とにかく国際的に見て厳し過ぎるわけですね。WHO基準とも懸け離れているわけですね。
この七十デシベル以上という障害者認定の基準は、歴史的に、いつ、最初、どうやって決められたんですか。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
現在のこの聴覚障害者でございますけれども、身体障害者福祉法が制定された当時から、その対象に聴覚障害の方を位置付けというか、位置付けられているのは変わりがないんですけれども、その中でデシベル値での定義がなされるようになりましたのは昭和二十九年の身体障害者福祉法の改正であるというふうに承知をしております。その際に、両耳聴力レベルが七十デシベル、当時はJIS規格のやり方がちょっと違ったようでございますので、規定の仕方が当時は六十と言っていたのが、その後、JIS規格の測定方法の変更に伴って七十に変わったというふうに承知をしておりますけれども、その方々を聴覚機能に重度の障害がある方ということで身体障害者の対象にしたというふうに承知をしております。
○大門実紀史君 私は、この七十デシベルが不思議で、なぜ、どこで、いつ決められたのかと、この基準がということで、ちょっといろいろ調べてみたら、やっとちょっと発見したんですけど、全難聴、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会がございますね。その機関誌の二〇一四年の十月号に、難聴の明日という機関誌があるんですが、そこにこの経過を調べた論文を見付けました。
資料二の一覧表を見ていただきまして、それがその論文に書いて、出ている表なんですけれども、この論文は、大学の研究員をされている専門家の方が書かれたもので、もう大変詳しく歴史的経過を含めてよく調べられたものでございます。ただ、ほかの方が書いた論文をそのままこうやって質問するわけにいきませんので、論文に出てくる法文とか文献ですね、法令ですね、もうちょっと徹夜になりましたけど、直接確認をいたしました。間違いございません。
私、この論文は厚労省は当時見ていたはずだと思うんですけど、十一年前ですけれども、この論文無視しないでよく吟味をしていれば、こういういまだ七十デシベルを批判されることはなかったんじゃないかと思っているような重要な論文でございます。
時間の関係で結論だけ申し上げますと、まさにこの表でございまして、今の身体障害者福祉法における聴覚障害者の等級というのは、ほかでもないんですね、労働基準法の聴覚障害者等級が基になっているということでございます。
つまり、今の障害者の認定というのは、今、現代は障害者が社会生活に困らないようにしていくと、ノーマライゼーションとかQOLですね、いわゆるクオリティー・オブ・ライフですね、生活の質を上げるというふうな、そういう観点から今考えようとなっていますが、そういうものではなくて、障害者が労働者としてどれだけ働けるか、働く上でどれだけ障害になるか、いわゆる労働災害の用語で言う労働能力喪失率、喪失率、失う率によって定められたものだということじゃないんですか。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
この労働能力喪失率との関係で当時制定されたのかどうかということは記録は特に残っておりません。なので、今にわかにはちょっと確認ができていない状態ではございます。
○大門実紀史君 よく調べてください。私、調べました、本当に。
昭和二十四年の身体障害者福祉法の定義から始まります。そのときに障害者、身体障害者の定義は職業能力が損傷されている者ということですね。で、聴覚障害者でいう、またこの表ですけど、聴覚障害者でいう身体障害者等級六級というのは、労働能力喪失率五六%に該当するという基準なんですね。
もっともっと遡りますと、実は大正五年に施行された工場法というのがあります。そこからこの労働基準法における障害等級というのが始まりまして、昭和二年の工場法施行令改正時に労働能力喪失率による分類ということが行われて、昭和十一年の改正が今の基になっています。
今言われた昭和二十九年とか昭和五十九年はもっともっと後の話でございまして、始まりはそういうところにあって、要するに障害者の方々が今の、何といいますか、社会的な要請ですよね、ノーマライゼーションとか教育保障とかQOLとか、そういうこととは全く関係なく、この人は働けるのかどうかと、どれぐらい働く上で障害になるのかということで決めた基準で、もはやそんな基準は今の障害者の認定のときに使うべきでないと、過去の遺物ですよ、百十年前ですよ、これ、工場法というのは。そこから来ているようなものを、いまだそんなものを適用しようとしているから現場との矛盾が起きると、子供たちを差別するようなことが起きているんではないでしょうかね。
だから、これ再検討する時期に、もう時代に合わないんですよ、再検討する時期に来ているんじゃないかと思いますが、再検討したらどうですか。
○政府参考人(野村知司君) 聴覚障害を含めまして、身体障害者福祉法に基づく身体障害の認定基準でございますけれども、これ繰り返しになって恐縮ですけど、医学的な観点からの身体機能の状態を基本として、生活制限の程度によって定めているところでございます。
こちら、身体障害者福祉施策の対象とするかどうかというところで定義を決めているわけでございますけれども、この軽中度の難聴の方もこの身体障害者福祉法による障害者としてこういった福祉の支援の対象とするかどうかということにつきましては、いわゆるほかの障害種別とのバランスでございますとか関連施策ないしは財政的な影響などを踏まえた慎重な検討が必要ではないかなというふうに考えています。
一方で、障害に至らない難聴の方への支援ということにつきましては、厚労省の中でも関係部局連携して包括的に対応する体制を整えた上で、各種補聴器の普及啓発でございますとか手引の作成など取り組んでいるところではございます。
○大門実紀史君 そう言われますけど、令和四年に視覚障害者の方は、やっぱりその認定基準が改正されております。それはやっぱり今の当事者の声、先ほど言いました社会的要請に基づいて改めて認定の基準が変わっているんですよね。だから、変えられないわけじゃないんですよ。バランスじゃないんですよ。それぞれの障害に応じて、よく調べて、今の時代の要請も含めて変えられるんですよね。だから、そういう努力をすべきだということを申し上げているわけですね。
これは実は本当に身体障害者の認定基準全体に関わる大きな問題だと思いますので、政治判断が必要で個々で答えられないというのはよく分かりますので、次は厚労大臣あるいは総理大臣にも聞いてみたいというふうに思いますが、それまでやっぱり厚労省としてちゃんと調べるべきです、いろんなことを。いろんなこと研究すべきですよね。そのことも今日は申し上げておきたいというふうに思います。
時間の関係でもう一つ、次の資料にございますが、この七十デシベル問題というのは子供たちだけじゃないんですよ、高齢者にも関わるんです。今、加齢性難聴といって、高齢者の方々の耳が聞こえなくなって、それが認知症やいろんなのにつながるということで、これは厚労省としても何とかしなきゃということで対策は打っておられますが、相変わらず、補聴器については障害認定七十デシベル超えないから国はお金出さないとなっております。
お手元の資料は、東京都がもうこれだけの各自治体で高齢者の補聴器購入について支援をしているという資料です。一番最後は、東京都が国へその予算要望を要望しているという資料でございます。実はこの問題、私、今から七年前ですかね、麻生財務大臣に、この問題重要ですと、財務省としても考えてと言ったら、麻生大臣、こうおっしゃいました。まだ厚労省から要望が出ていないんですと、厚労省から要望が出てきたらこれ大事な問題なんできちんと対応しますということを明確に、財政金融委員会ですけど、私に答弁されているわけでございます。
あれから七年たって、これだけ自治体で、当時は東京も五つぐらいしかまだやっていなかったですね、しかも非常に少額の助成しかしていなかったんですけど、今多いところは十万を超える助成をしています。これ、国の助成がありません。単独でやっております。それぐらい重要な問題として捉えているわけでございますので、これも、麻生財務大臣ですね、今の高市内閣のバックボーンですから、応えてくれるというんだから、厚労省として要望出したらどうでしょうか。
○政府参考人(林俊宏君) お答え申し上げます。
高齢になりますと、老化に伴いまして聴力、視力など様々な身体機能が低下します。必要に応じて補聴器や眼鏡など必要とされる方もおられます。そういった方に対して早期対応、早期発見、早期対応をすることは非常に重要と考えております。
ただ一方で、広く高齢者の方がこうした補聴器などの購入に要する費用について、幅広く国が公費によりその助成を行うことについては様々な御意見があるところでありまして、慎重な検討が必要というふうに考えております。
以上でございます。
○大門実紀史君 時間が来ましたので終わります。
大臣、済みません、質問できなくなっちゃって、申し訳ありません。終わります。