<議事録>
○大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史でございます。
今日は、お忙しいところ、ありがとうございます。
まず、濱田参考人に伺います。
今、省庁超えてという大胆な、かつ本質的な提案をされたというふうに思います。ただ、今日はちょっとこの法改正なんで、その範囲で伺いたいと思いますが、私もふだんそういうことを思っておりましたのでね。
五年前もこの参考人の質疑に濱田参考人来ていただいて、こうやって私も質問させてもらって、私、あの五年前の改正はもう半歩の前進にもならないという非常に厳しい評価をしたんですけれど、濱田さんはそのときには、一歩前進、よくやったとおっしゃったんですね。今回、私は一歩前進と思っているんですけど、濱田さんは百歩後退ということで、この五年で何があったのかと思ったりしますけど、恐らく、五年前言われていましたけど、あの改正でこの後いろいろやってくれるんだというような、かなり御期待をされたんではないかと。それに比べたらかなり落胆があるという意味でおっしゃったのかなというふうにちょっと感じたんですけれども。
私も国会でたくさんこういういろんな企業の問題取り上げてきて、第一生命の不払事件とかレオパレスとか秋田書店とかジャパンライフとか、ほとんど公益通報、内部通報の方の情報で質問をやらせてもらって、いろいろ取り組んできたんですけれども、みんな配置転換とか嫌がらせとか解雇とか、ひどい扱いを受けてきたわけですよね。それを見ると、この前も私、質疑で言ったんですけど、今回本当にこれで皆さんが、そういう方々が、顔も浮かぶんですけれど、助かるのかな、助けられるのかなと、こう考えたりするんですが。
濱田参考人も、先ほどありました、一審は敗訴されて二審は勝訴ですよね。やっぱり、会社側はあれこれ理由付けて、公益通報したから不利益取扱いしたんじゃないというふうなことをいろいろやるわけですね。それがまた立証が大変難しいわけでございまして、そういう点でいえば、濱田参考人は勝ってこられたけれど、必ずしも勝てることとは限らない、負ける方が多かったわけですよね。
お聞きしたいのは、今回の改正で、濱田参考人のような不利益取扱い、これ裁判、今回の改正が施行されたら裁判で勝てるようになるんでしょうか、濱田さんのケースだったらですね。
○参考人(濱田正晴君) 答えだけ言うと、勝てないですね。それだけでいいか、ちょっと追加で言うと、一歩と百歩の違いの説明をさせていただければと。
前回、五年前は一歩前進というのは、いわゆる無断漏えいに対しての刑事罰ということで、これは別に労働法の本丸じゃないですよ。別に、漏えいしたかどうかだけの話ですから、シンプルな話で、別にそこに、いわゆるこの警察、検察、いわゆる刑事裁判の中で、いわゆる企業の、何といいますかね、この因果関係とか、いわゆる懲戒、解雇、これといわゆる通報との因果関係に対しては、今回そこだけやるということは、このいわゆる刑事裁判と民事とよく理解した上でやらぬといかぬですよ。
要するに、これ、どう考えたって、刑罰を付けるんだったら、まずは民事で、これが因果関係があるところまで通報者が民事訴訟で立証しないと、それは捜査は動けないですよ。要は、警察は民事には介入しちゃいけませんから。そこを分かってというか、分かっているか知らないけど、刑罰、刑罰って。要は、このセオリーからいってどういう仕組みなのかということを全く理解せず、刑罰、刑罰だけが先行していて。ということで、今回は、労働法の本丸で捜査まで期待し過ぎていると。
さらに、だとしても、さっき申し上げたように、配転命令でも、今回話題になっているけど、私は前回も裁判の話はしていますから、もう五年たったんですよ。五年たっているから相当見方は厳しくなるというのは当たり前じゃないですか。そんな中で何にも進んでいないじゃないですか。だから、当然減点は多いですよね。要するに、タイム・イズ・マネーですからね。あとは、やっぱりスピード感、何事も今は大事な時代ですから。
そういうことを含めて考えると、さっき冒頭に申し上げたいわゆる刑罰というところをよく理解しないで、そのプロセスを、それと、労働法の本丸というところに、警察、検察及び略式起訴でも、結局、刑事裁判が絶対要ると。だから、私は、レビューは、これで一発でも入れば、いや、これは画期的だけど、まずここは、私の予想ですけど、無理だろうなと。
だから、結果的には、企業側の担当者を、やっぱり普通の素人のいわゆる労働者を脅すだけみたいな感じになって、なおかつ、過度に今度は通報者に対して期待を持たせると。誰も別に、警察行ったって、いや、これ因果関係がこうで、これ法律はこうだからって捜査なんかしてくれるとは、私は考えられない。
ただ、そういういわゆる年月の件と、二つだけ、やっちゃったことの、配転命令入れなかったということの副作用ですね。だから、副作用というのは、やっぱりなかなかよく見ておかないといけないという、トータルな形で、シンプルだった、一歩前進。今回は労働法の本丸に突っ込んでしまった。そこには様々なことがある。警察だって詐欺とかなんとかだとやっぱり動きやすいですけど、これはなかなか難しいというふうにしか評価できないですね。
という意味で、点数が違うということです。
○大門実紀史君 私も実はさっき名前挙げた中の一人の方に今回のを聞いたら、ほとんど現場は救われないと、ただ、抑止力効果といいますか、それはあるんではないかということは言われて、聞いてまいりました。
山本参考人に伺いますけれど、先ほど濱田参考人から厳しい、検討委員会の在り方についてありました。私もずっと消費者庁のいろんなのを見てきて、やっぱり事務方がぐっとやろうと思ったら、ちょっとかなり検討委員会の出てくるもの違うというのは、ちょっと私の経験ですけどね、もちろん先生方の努力もあるんですけれど。
当事者が入らないとか、検討会の在り方、こういうものについて改善の余地は、何か御意見ございますか。
○参考人(山本隆司君) 今回の検討会では、通報者側ということで申し上げれば、その通報者側に立った弁護士の方が入っているということがございました。それから、日弁連に対してもヒアリングを行っているということがございます。それを通じて通報者、通報する立場からの意見は吸い上げたというふうに考えております。
なかなかある特定のその事案に関わった方にどのような形で入っていただくかというところは難しいところがあるかなというふうには感じております。何がベストの解かというのは私も持ち合わせていませんけれども、今回の検討会においてはそのような形で意見を反映させたということです。
○大門実紀史君 私は、オブザーバーとかいろんな形で、やっぱりそういうふうに考えていかないと、検討会の議事録読みましたけど、もちろん現場の通報者のために頑張ってきた弁護士さんも意見言われます、頑張って意見言われましたけど、やっぱり当事者が検討会でもっともっと発言してもらうという機会を設けられることが大事かなというふうに思います。
林参考人に伺います。
先ほどおっしゃった中で、通報者が訴訟で闘っている間、苦しい状況ですよね。私も見てまいりました、何人も顔浮かびますけれども。非常に経済的にも苦しいと。これに対して、本当に支援の措置がないということがありますよね。これ本当非常に現実的に大事な問題ではないかというふうに思うわけですけれども、具体的にどうすればいいのか、あるいは海外でそういう支援制度があるのかどうか、日本では何が課題になっているか、ちょっと教えてもらえますかね。
○参考人(林尚美君) 先ほど申し上げました付加金制度というのは既に労働基準法であるんですけれども、そのほかに報奨金制度というものがありまして、この委員会でも検討をされていると思うんですけれども、アメリカではSOX法とかそういう法律にのっとっているんですけれども、公益通報があって国庫にお金が入った場合に報奨金としてその何%か払われると、三〇%とかで、すごい金額が入るわけですけれども、そういう法律制度があったり、韓国の法律では公的にお金が出たりというような制度があります。
そういうような報奨金制度で公益通報がしやすくなっているということもありますし、韓国においては公益通報というのがどういうものなのかというのを国民がすごくよく知っているんですね。こういうのが入ったら、みんなもう手を引かなきゃいけないと、そこから操作はできないし、公正にやらなくてはいけないという制度になっておりますので、そういうことも日本で含めて考えていったらどうかなというふうに思っております。
○大門実紀史君 その議論のときに、何かちょっと、日本のまだ社会の受け止めでいくと、何か報奨金目当てにやるのかみたいなちょっとすごい誤解がすぐ生じるんですよね。そうじゃないということをちゃんと伝えながら、やっぱり必要かなと思います。
もう一つ林参考人に伺いますけど、資料の持ち出しの免責について、この必要性といいますか、これ、実は本当に第一生命不払事件のとき、不払問題のときあったんですけれども、もう少しお考えあれば詳しく聞かせていただけますか。
○参考人(林尚美君) 資料の持ち出しをしますと、まず窃盗だというふうに言われてしまうんですね。結局、コピーをして持って出てしまうので窃盗罪だというふうに言われてしまうというので、それで懲戒請求すると、窃盗罪に懲戒請求で解雇とかというのではもうやっていけないと。
先ほど申し上げましたように、具体的な資料がないと、何が不正なのかどうかというのを弁護士としても検討することができないんです。やみくもに不正があるといって公益通報しても、後で真実相当性がないんだというふうに言われてしまう可能性の方が高いので、なるべく固い証拠を固めていって、裁判にするなり内部通報するなり、その準備をしないとできないと思うんですね。不当に単なる臆測で言っているのではないかと言われてしまうのが落ちですから、やはり正確な情報をもらいたいと。そうなると、情報を入手したいというのは当然のことでして、それが付随する行為であって、公益通報に付随するので適法であると、正当行為だというふうに判断していただかなくてはいけないというふうに考えております。
○大門実紀史君 終わります。