<議事録>
○大門実紀史君 大門です。
今回の法案は、全体として建て替えや補修を進めやすくするための改定だというふうに理解しておりますが、今日もありましたし、衆議院では大議論になりましたけれども、共有部分の損害賠償請求権については、これはちょっとかなり大変な項目だなと思っておりますので、その点について絞って質問をさせていただきます。
改正案は、欠陥マンションなどの補修、修繕、これ分譲事業者に旧区分所有者も含めて管理者が一括して損害賠償請求することが可能になるということですよね。これは前進だと思うんですが、ただ、旧区分所有者が別段の意思表示をすると、それぞれ、お金自分に欲しいとかいろんなことが起きて、一括請求ができなくなって、結果的に修繕ができない事態が想定されるということで、この点について、現場で長い間欠陥マンション問題に取り組んでこられた全国のたくさんの弁護士さん、あと弁護士会、日弁連、また管理組合の皆さんからも、この部分をもう削除してほしいというような修正を求める強い声が寄せられております。このままでは、かえってマンションの修繕が進まなくなるのではないかということですね。
これは決して一部の方々の声ではないということをちゃんと私たちは知っておく必要があると思います。残念ながら、参議院では参考人質疑がありませんが、参考人質疑やれば分かったと思うんですけれど、これ相当の方々の、現場のマンション問題に直面している大多数の方々の要望だったと、であるということですね。その代わり、後で質問しますが、当然承継を法案に明記してほしいということがあったわけでございます。
この区分所有法というのは、法務省マターなんですかね、言葉が非常に難しいんですけれども、例えば当然承継というのは何かというと、分譲業者と旧区分所有者の間で契約不適合ですかね、契約と違う工事が行われていたということで、損害賠償権が、旧区分所有者が区分所有権を新しい人、つまり新しい人にマンションを売ったときに区分所有権は移るわけですが、そのときに当然のこととしてその損害賠償権も移転するというのが当然承継という、まあ常識的に言うとみんなそうだろうなと思うのが当然承継の考え方でございます。
ところが、この現場の声を法務省、国交省は拒否をして、特に法務省が、これまた難しい言葉で、分属説というんですか、これはちょっとよく分からないんですけど、要するに、共有物に関する損害賠償権は金銭債権だから、共有者に分割して帰属すると。転売しても旧区分所有者から新、新しい区分所有者に当然に移転しないと、移転はしないんだということですね。
そんなこと言っても、マンションの共有部分というのは、いわゆる民法の二百五十六条ですか、共有の概念とありますよね。これは分割できない、あっ、分割できるものというのが民法二百五十六条の共有の概念だと思うんですけれど、実際問題、マンションの共有部分というのは分割できないですよね、できないですよね。にもかかわらず、その考え方に固執して、法務省が現実世界にそういう、何といいますか、民法上の論を押し付けて、先ほど言った現場の方々を困らせているというのが今現在だと思うんですよね。
まず、今、現場が、現状がどうなっているかということでございますが、衆議院で竹内民事局長がこう答えておられます。現行法では、今現在ですね、この法改正の前の、現行法では、分譲業者と旧区分所有者の間の賠償請求権は、売主であるマンションを売った方の分譲業者と買った区分所有者の間の契約関係に基づき、買った方の区分所有者が取得する債権であり、物権である区分所有権は全く別個の金銭債権であると。何言っているか分からないような答弁をされているわけで、要するに、区分所有権は移るけど賠償請求権は当然に移るものではないというのが現行法の解釈だとおっしゃっているんですね。
そうでしょうかということなんですけど、それはどこかに明文化されているんですか。どこかに書いてあるんですか。ちょっと教えてください。
○政府参考人(内野宗揮君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、当然承継に関する規律を設けるべきであるという立場からは、現行法の下におきましても、その区分所有権の譲渡に伴いまして、その共用部分等について生じました損害賠償請求権が当然に移転するという現行法の解釈を取るべきであるというふうな指摘があること、これは承知をしております。
ただ、裁判例には、共用部分等について生じた損害賠償請求権につきましては、区分所有権が譲渡されたとしても、これに伴い当然に移転するものではないという理解を前提としたものがあるというふうに承知もしておりますし、もう既に委員の方から御紹介がございましたとおり、ここで問題になっております共用部分の瑕疵についての損害賠償請求権、これは、分譲業者から売買契約に基づきまして当初その区分所有権を、区分所有建物を購入したその当初の区分所有者ですね、これがそれぞれ締結しました売買契約によってそれぞれ取得するものでございますので、やはりこれは区分所有権とは別の財産権と、このように観念せざるを得ないというふうに制度上も考えております。
したがいまして、既に委員の方から御紹介ございましたとおり、一般的には、その区分所有権が譲渡をされたとしても、これに伴い当然に移転するものではないというふうに理解されているというふうに承知をしております。
○大門実紀史君 いや、だから、それどこかに書いてあるんですか。今しゃべっているだけじゃないんですか。
お聞きになっている先生方は何言っているか分からないと思うんですけど、このちょっと配った資料で見てもらいながらだと少しは分かる話かなと思いますけど、現行の区分所有法は、転売時に、転売したときに共有部分の損害賠償権が誰に帰属するのかは明確に定めてないんですよ。つまり、現場の解釈にずっと委ねられてきたわけですね。今おっしゃった旧区分所有者に帰属するというのは、先ほど言いました、ちょっと難しい、私たちには慣れない言い方ですが、分属帰属説というんですかね、で、新区分所有者に移るんだと。これは当然承継説というんですけれども、いずれにせよ、そんな明確にどこかに解釈が書かれていたわけでなくて、しかも、実務上、現場では当然承継説で運用されてきたわけですよね。
マンション売って、買った人が、マンションに瑕疵があると、欠陥あると、賠償請求したり直してもらうと、当たり前ですよね。その権利が、もう売った、売ってどこかにいる人にも権利があるなんて、普通誰も想像しないですよね。今回、みんな、そんなことかと思っているんですけど、そんなことは想像しないわけですよね、かったわけですよね。ですから、現実的にデベロッパーから欠陥マンションの損害賠償金とかが現区分所有者に支払われたり、あるいは直されていたわけですね、修繕してきたわけですよね。それが実態だと思うんですよ。今までの現実だと思うんですけど、違うんですか。
○政府参考人(内野宗揮君) 個別の事案をここで御紹介することは困難なわけでありますけれども、今、私が先ほど少し申し上げましたところにございますとおり、この主語、この瑕疵に伴います損害賠償請求権、これはやはり、それぞれの分譲業者、このお示しいただきました資料でまいりますと、分譲業者と最初のAさんとの間のこの売買契約に基づいてそれぞれ取得する権利であります。したがいまして、これがいわゆる区分所有権という物権の譲渡と同様、それに移転して動いていくというのは、これは特段のやはり明文の規定というのは現行法上存在していないというふうに法務省としては認識をしておるところであります。
やはり、ということは、逆に言えば、別の権利でありますので、例えばこの図でいきますと、AさんからBさんに、Aさんが分譲事業者に対する損害賠償請求権を移転するというのであれば、これはやはり別途債権譲渡の合意、こういったことがされる必要があるというふうに考えております。
現実に起きている事象がどのようなことになっているのかというのは、まさにこういった当事者間の契約関係にもよるところがあるかなと思っておりますが、法律の規律といたしましては、別の財産権である以上は、そこに譲渡の原因となる法律行為がなければ、それは元々の債権、財産を取得したその方が保持し続けるというのが現行法の仕組みであるというふうに理解をしております。
○大門実紀史君 あなた、本当に法務省の人ですか。契約関係で、それは契約によっていろいろやることはあるかも分からないけど、裁判になって、裁判になって、事実上、当然承継の考え方で現区分所有者に損害賠償されているんですよ。裁判を通じて、法の判断でされていることを言っているんですよね、言っているんですね。何かちょっと、もうちょっとちゃんとして答えてくれますか、こっちの方は素人なんだから。
ですから、当然承継の考え方は、もう既に行われている現行区分所有法の現場での解釈、確かにグレーゾーンあったと思うんですけどね、既に行われている実態から導き出されて、現場でこの問題ずっと取り組んできた弁護士さんや管理組合の人たちは、それをきちっと位置付けてほしいと。何か新たに立法して決めるんではなくて、ずっと長い間行われてきたことを、当然承継を、何といいますか、確認規定として入れてほしいということなんですよね。
裁判とかいろいろあるんですが、要するにそういうことを、東京地裁の判決も見ましたけれど、そういう、今までマンションの、欠陥マンションの裁判で何が行われてきたとか、そういうこととか全く考えようとしないで、法の理論だけでああいう、私はあの判決は間違っていると思いますし、また違う裁判があるかも分かりませんよね、あれに慌てちゃって、現場のことを知らない判決に慌てちゃってこういうことをやるから、何か取り繕うようなことをやるから、現場から違うよという声が大きく上がっているんだというふうに思います。
それで、さらに、法務省ちょっとどうしちゃったのかと思うんだけど、衆議院の連合審査で竹内民事局長は、もういかにもこの当然承継を否定するために、まあここまで言うかというようなことをおっしゃったんですよね。当然承継を遡及適用というか、現実今あることを認めることなんですけど、一応遡及適用とおっしゃっていますけれども、国民の権利義務に影響を及ぼすことに加え、社会経済に著しい混乱をもたらすと、だから認められないと。ここまで言うかと。
さっき言ったように、当然承継って今までやられてきたんです、現実的には。やられてきたことなんですね。何か新しく遡って遡及するということはないんですよね。だから、実態の把握がまず違うんですけれども、しかも、それにもかかわらず社会経済に著しい混乱をもたらすと強い断定的な口調でおっしゃっているんですけど、本当にそこまで言うかという感じなんですが、じゃ、何が起きるんですか。社会経済に著しい混乱、具体的にはどういうことをおっしゃっているんですか。
○政府参考人(内野宗揮君) お答え申し上げます。
具体的に申し上げれば、例えば、今はこれ遡及適用といった部分についての御指摘だというふうに、当然承継を遡及的に適用したらどのようにものが起こり得るかということの御指摘だというふうに理解をした上で申し上げます。
例えば、既に分譲業者から損害賠償金の支払を受けていた区分所有者がいたといたします。この区分所有者が、旧区分所有者が、現区分所有者、いわゆる、お示しいただきました資料では新区分所有者というふうに表記されておりますが、から損害賠償金の引渡しを求められる事態が生じる可能性があるというふうにまず言えるかと思います。さらに、既に分譲業者から損害賠償金の支払を受けていたという旧区分所有者がいたとしますと、この旧区分所有者が請求できる権利がもうなくなると、なかったことになるというわけでありますから、分譲業者からその支払った損害賠償金の返還を求められるという事態も生じる可能性があると言えるわけであります。
さらに、既にその損害賠償金を多数の区分所有者らに、支払済みであった区分所有者というのも想定されるわけでありますけれども、この区分所有者、ごめんなさい、分譲業者、失礼しました、分譲業者ですね、支払済みであった分譲業者というのも想定されるわけでありますけれども、この分譲業者におきましても、元々請求できる権利が遡及的になかったということになるわけでありますから、当該支払は無効であるということで、現区分所有者、いわゆる新区分所有者から改めて損害賠償金の支払を求められる、こういう可能性というのも指摘できるわけであります。
こういったことが経済社会に影響を与えるという、こういうことになろうかと考えております。
○大門実紀史君 現実には起こり得ません。
なぜならば、例えばこの図で、ちょうど衆議院でもっと具体的な話を米山委員とやられていますよね。例えばこの図でいきますと、区分所有者AさんがBさんにマンションを譲渡したと。Aさんが住んでいるときに共有部分に雨漏りがしたと。で、Aさん含めてマンションの住人が、もう取りあえず急いで自分たちで費用を出し合って雨漏りを修理したと。その後、分譲業者に修理代を請求しようとなったけど、なかなか折り合い付かないまま推移したと。このAさんは事情があって転居しなきゃいけないんで、このマンションをBさんに売ったと。で、Bさんがマンションを買って、Bさんが住んでいるわけですね。で、Bさんが現在の新区分所有者なんですけれども、結局、訴訟が提起されて、裁判になって、勝って修理費用を得たと。そうすると、Bさんにマンションを売ったAさんは既に自分で修理費用を負担していますよねという話ですよね。これを管理人からもらうことができるのかというと、これは、当然承継だと損害賠償権がBさんに移転しているから、Aさんは、払ったんだけども、それを取り戻す、回収することはできないというようなこと、今言ったことを具体的に言うとそういう例でおっしゃっていたんですけど。
これ、普通そうならないですよ。普通、修繕するときは、具体的に、みんなほとんど、どこだってそうなんですけど、共有部分の欠陥について区分所有者が費用を出し合って修理するというのはどんなケースがあるんですか。通常は、共有部分の工事は管理組合が決定して実施している修繕積立金から出されるものです、修繕積立金。これは持っていくことできません。そこから出されたものでありますので、Aさんが後から返してくれというような、そういうことは起こり得ないんですよね、起こり得ないんですね。
仮に考えると、もう管理組合がなくて、何というんですかね、もう自分たちで自費で、修繕積立金をやっていないと、自費で出し合って修繕するというケースがまれにあるかも分かりませんよね。その場合は、次の転売のときにその分、直した分価値が上がるわけだから、転売価格に乗せればいいわけでありまして、そういうレアケースでさえそういうことができるんで、こんな払ったのが返ってこないみたいな例を、あり得ない例を挙げるのはちょっと違うんじゃないかと思うんですよね。
何かいろいろ言われますけど、全部、基本的に欠陥の補修工事の場合は、まず明白な瑕疵や軽微な瑕疵であればもう損害賠償請求する前に業者が直すんですよ、普通は、普通は、明白な瑕疵とか軽微な。なぜなら、そうしないとその業者の信頼が落ちるわけですね。評判が悪くなるんですね。次の仕事来なくなりますので、そういうのは大体普通は応じるんですよね。もし応じないと、争いがある場合、和解交渉になりますよね。で、訴訟になりますよね。訴訟では、かえって訴訟に出た場合は、その訴訟が終わる前に補修を行っちゃうと瑕疵の立証が困難になるため、普通、訴訟になりますと、先に補修を自分たちでやることはあり得ないんですよ。だから、これも実例ないんです、そんなものは。さらに、重大な、新聞にも出るような重大な欠陥の場合は、まさに補修の費用が多額になりますので、こんなの自分たちで負担するなんてことはまたあり得ないわけですよね。
それが現実の世界なんで、そういうあり得ない例を国会で堂々と挙げて、何かもう当然承継やると大変な被害が旧区分者にあるようなことを並べ立てて、むしろ、今の現区分所有者が修繕できなくなるということの方が多大な被害だというふうに思うわけですね。
何でこんな無理な議論しているのかなと思うんですけれど、さっき申し上げましたけど、あり得ない話ばっかり挙げて、当然承継駄目だ、大変だ大変だとおっしゃるんですけれども、これ、やっぱり法務省の頭の中が、現場の実態から出発するんじゃなくて、さきに申し上げましたけど、自分たちの民法解釈を何が何でも堅持したいと。先にその法理論といいますか、皆さんの解釈ありきで、それを正当化するために、今申し上げたようなあり得ない事例あるいはレアケースばっかり並べて、これはできないんだと答弁しているだけじゃないんですか。いかがですか。
○政府参考人(内野宗揮君) あり得ない事案というところまでの認識、法制審議会で実務家の方々、学者も参画しておりますけれども、その議論を経た上での本法案の提出、ここに至るまでのこの我々の認識といたしましては、今法務省から説明をさせていただいている事例、これは社会的事実としてはあり得ないというところまでの事実認識には立っておらないというところであります。
若干付言をいたしますれば、マンション等の区分所有建物に不具合があったという場合には、先に区分所有者が費用を負担して修繕をした上で分譲事業者に対して損害賠償請求をするということも、これはあり得ると認識しております。これは、前提といたしました法律の説明は先ほど申し上げたとおりであります。そのような事例において、例えば、修繕費用を負担した区分所有者が実際のその損害賠償請求をする前に一応様々な事情で区分所有権を譲渡しなければならなくなったような場合、こういう場合には、やはり旧区分所有者が分譲事業者に対して損害賠償請求権を行使して、負担した費用相当額の損害賠償金の支払を受ける、こういうことは仕組み上考えられるわけでございます。
こういった事例があり得ることを度外視をしてしまいますと、やはりこの点については問題があるんではないか、課題があるんではないかというふうに考えております。
○大門実紀史君 延々やりますか。レアケースばっかり挙げて、あり得ないことはないということばっかり言っていますけど、ほとんどあり得ないんですよ。あり得る話をしましょうと言っているわけですよ、大多数の方がですね。
逆に、今回の改正のように、元、旧区分所有者が別段の意思を、意思表示をすることを認めたら、かえって民事局長おっしゃるように社会経済に混乱招くんではないかと、マンションの補修にブレーキを掛けるんではないかと。逆だと思うんですよね。この改正がそういうことを招くんではないかというふうに思うんですよね。
この改正やりますと、分属帰属説ですね、つまり、区分所有権は移転しても損害賠償権は移転しないよと、そのままだよということを、もう法務省というか、立法府というか、宣言したことになるわけですね、宣言したことになるわけですね。損害賠償権は共有者に分割して帰属すると、新区分所有者には移らないということを、改正前も含めて、前も含めて、分属帰属説の解釈が正しかったということを、法務省といいますか、国として、政府として認めることになるわけですね。
そうすると、逆に言いますとどうなるかというと、これまで請求権など持っていないと考えた人たちは、請求権あると知らなかったと、今回のこの法改正通じて自分にも権利があると知ったと、じゃ、払ってくれということを過去のもう解決した裁判の事例とか等々で言い始めるということは十分あるわけですね。何年も前に解決したものについても、ああ、そうだったのかと、私はそのときの元区分所有者だと、旧だとですね。
そうしたら、賠償金は既に補修にも当てられているわけですよね、当てられているわけですね。じゃ、誰にそれ請求するのというと、旧区分所有者は現区分所有者に補修費用の一部の返還を求めることになるんじゃないですか。だから、逆にこういうことが、そういうことが起きるんじゃないですか。そんなこと考えていますか。この方が、この方が大混乱を招くんではないですか。これから先も招きますけど、どうするんですか、今まで決着付いたものについて。
○政府参考人(内野宗揮君) まず、共用部分に係ります損害賠償請求権、これは、本日も申し上げておりますけれども、それぞれの、例えばこのお示しいただきました資料に基づけば、分譲事業者とAさんとの間の個別の売買契約、これに基づいて発生するものであります。すなわち、これはあくまで債権という、区分所有権とは別個の財産権でありまして、区分所有権の譲渡に伴い当然に移転するものではないと考えております。そのため、旧区分所有者から現区分所有者に区分所有権が譲渡された場合でも、今申し上げました損害賠償請求権も譲渡されない限り、旧区分所有者に損害賠償請求権が帰属したままであるというふうに考えられるところであります。
その上で、お尋ねは、現行法の下でも区分所有権の譲渡に伴って共用部分等に生じた損害賠償請求権は当然移転することを前提に、当然承継を前提としない本改正案が施行された後に再度当然承継を認める法改正をすると実務上混乱が生ずるのではないかというもの、御指摘だというふうに理解をいたしました。
しかし、まず前提といたしまして、現行法の規律は、今申し上げたように、当然に区分所有権の譲渡とともに損害請求権も当然に移転するというものではないと考えておるところからいたしますと、むしろその五年後に当然承継を、今の何も手だてを考えないまま、例えばいろんな要件とか必要性でありましたり様々な工夫をしないまま、単に一律に権利を移転するということが起きますれば、本日の幾つか、混乱が発生する、社会的な問題、経済上の問題が発生するということが申し上げておりますけれども、これがまさにその五年後の当然承継を認める改正をしたときに発生し得るというような評価になるのかなというふうに考えております。
○大門実紀史君 何をぐるぐるぐるぐる同じことを言っているんですか。五年後のことなんか聞いていないですよ。今までのことはどうするんですかと言っているんですよ、今までのことは。
例えば、衆議院の参考人で来られた神崎哲弁護士さんは、自分で、自分が担当した事件についておっしゃっていましたね。二十九棟、合計六百五十四住戸のマンションの共用部分の欠陥について、補修費用が約四億円の損害賠償を請求した事件があったと。その事件では、訴え提起まで七年間掛かって、その間に所有権が移転した区画が百五十住戸あったということですね。この事件は、被告会社、分譲事業者からの申出によって補修による和解で解決したわけですよね。こういう事例がいっぱいあるわけですよ、今。
ところが、今回、この改正案が通して、別段の意思表示がある場合と、つまり旧区分所有者に請求権ありますよということをやっていたとしたらですね、そのときですね、これから起こるわけですけど、そういうことが起きる可能性があるわけですけれど、この訴えられた会社はどう考えると思いますか。はい、分かりましたということで、補修に乗らないですよ、和解に乗りませんよ。だって、別段の意思表示をして請求される可能性が残っていますから、残っていますから。それを全部はっきりさせてもらわないと、和解といえど補修には応じられませんということになるわけですよね。これ現実的に起こる話ですよね、これからも。しかも、この神崎弁護士さんの場合だったら、過去に今の、今回の改正が通ったら、そうやられて恐らく和解に行かなかっただろうと。こういう事例がこれから起きるわけですね。
そういうことをちゃんと考えた上で、法務省は今回の法改正考えたんですか。こういうことが起こる可能性というのは、何も考えていないんですか。
○政府参考人(内野宗揮君) 現行法の理解につきましては、既に申し上げたとおりでございます。やはり別の、区分所有権と別の債権、別の財産権である以上、これが区分所有権の譲渡に伴って、区分所有者の意思にかかわらず、これが移転をしてしまうと。これはやはり財産権の保障の観点からも特に慎重な検討が必要であろうというふうに考えるところでございます。
ただ、事情によりますれば、瑕疵の修補のための損害賠償請求権、これを修補の、何というんですか、引き当てといいますか、これを原資として修補をやろうというふうに考えているこの区分所有建物、これも存在し得ることは、それは、その点は御指摘のとおりかと思います。
こういった場面がもしその区分所有の建物の実情に応じまして存在しているとすれば、これはやはり今日の審議の中でも出てきております規約による対応ですね、こういう形で、損害賠償請求権の使途、こういったものを適正に定めていただくと、こういうことであれば、これは、冒頭申し上げました財産権の保障といったような点をクリアした上で、その損害賠償請求権に対応して支払われました損害金、これをそのまま修補に充てることが可能であるということであろうと考えております。この辺りは、本日の審議でも幾つか、何回か御説明申し上げたとおりだというふうに考えております。
○大門実紀史君 これだけの法務省は力入れた提案しているんだから、もう少しまともに答えられませんか。堂々と、もっときちっとした法的な答弁できないんですか。その程度でこれだけ現場の人たち困らせるんですか、法務省は。
管理規約の話も出ましたけれど、これはっきり言って遡及効果ありませんよね。実際の拘束力にもちょっとおぼつかないですよね。だって、あれですか、マンション管理標準規約の調査によると、標準管理規約におおむね準拠しているのは三五%ぐらいの、つまり約三分の二程度の管理組合では標準管理規約に即応していないということですよね。しかも、今回、やってくれと言ったって、管理規約の改善には区分所有者の四分の三の賛成で、これなかなかハードル高いですよね。
また、外国人、これは衆議院で議論ありました外国人の取得割合も増えているというふうなことで、努力しますというのは答弁で何回も繰り返されているんですけど、そんなもの、これ努力で、努力してできなかったという問題じゃ済まないんですよね、この管理規約で。ちゃんと一〇〇%きちっとやらないと、今言った問題が起きるということなんですね。これはもう答弁求めません、繰り返しありましたので。
この五年後の見直しについても、私、衆議院で野党の皆さん努力されたんだと思いますけれども、今申し上げたように、今回、これ認めちゃうわけですね。法に明らかに、分属帰属説をもう明らかにしちゃうわけで、書き込んじゃうわけですね、初めて。これは取り返しの付かない、今言った事態とかですね。で、仮に五年後、一旦認めておいて、この考え方を、どう変えるんですかということがあるわけで、この五年後の見直しは野党の皆さんの善意のあれだと思うんですけれど、これではかえって改悪になると、この法案はですね。それが現場から声が出ているということを指摘して、質問を終わります。
討論
○大門実紀史君 日本共産党を代表して、本改正案に反対の討論を行います。
本改正案は、マンションの建て替え、補修が進まない深刻な状況を改善しようとするもののはずです。ところが、先ほどの質疑で申し上げたように、本改正によって、かえって補修が進まない重大な懸念があります。共有部分の損害賠償権において、旧区分所有者の別段の意思表示を入れるのではなく、これまでの現場の実情に合わせ、当然承継を法案に明記すべきでした。現場で欠陥マンション問題に取り組んできた全国の弁護士さん、管理組合の皆さんもそれを求めてきました。
現場の声を無視し、かえって問題を広げるなど、何のための法改正か。政府、立法府がやるべきことは、机上の法律論争ではなく、現場の問題を具体的に解決するための法改正ではないでしょうか。
五年後の見直しでは、一旦、分属帰属説を認めてしまい、禍根を残すことになります。したがって、修正含め、本法案そのものに反対せざるを得ません。
住まいは人権であります。建て替えを合意形成を図りながら円滑に進めるためにも、経済的理由などで建て替えに賛同できない少数の方々への支援がもっと充実させるべきです。
賃借権消滅請求権の創設も、借地借家法における賃借人の保護の形骸化につながる懸念があります。
以上申し上げて、討論といたします。