<議事録>
○大門実紀史君 お疲れさまでございます。大門です。
損害保険代理店問題について質問いたします。
決算委員会初めて取り上げる問題ですので若干経過を申し上げますと、損保業界というのは大手の損保会社があります、東京海上日動とか損保ジャパンとかですね、その大手損保が代理店と契約を結んで、代理店を通じて保険商品を販売する、あるいは業務サービスを遂行するという形でございます。その地域の中小代理店、災害のときには被災者の保険申請など地域のセーフティーネットの役割を果たすんですけれども、そういう中小代理店、いわゆる専業代理店が全国で二万数千社ございます。皆さん、地域で大変頑張っておられます。
ところが、その大手損保の方が一方的に手数料を決めたり、減らしたり、あるいは統廃合を迫ったり、あるいは売上げが少ない代理店には廃業を迫る等々のことが、いわゆる優越的地位の濫用ですね、そう言われても仕方のないことがずっと続いていたわけでございます。
二〇一七年、今から八年前の三月ですけど、参議院の財政金融委員会でこの問題を初めて取り上げさせていただいて、当時の麻生太郎金融担当大臣、金融担当大臣が、この地域で頑張る中小損保代理店は災害のときなどのセーフティーネットとしても、また地域経済の担い手としても大事な存在だということを明確に御答弁いただいて、一気に事態が動いたわけでございます。
また、当時の金融庁の遠藤俊英監督局長が大変優れた方で、大臣の答弁に基づきすぐ動いていただいて、先ほど言いました大手損保が優越的地位濫用、やり過ぎのこといっぱいやったんですけど、それを調査して、好ましくない事例があるということで金融庁の見解という形で示していただきました。
また、当時、代理店いじめ、まあ名前言いませんが誰でも分かるような超大手損保ですけども、のトップを遠藤さんが呼んで注意をするというような直接指導もしていただいたというようなことがありまして、その後も、麻生大臣の後の鈴木大臣、金融担当大臣、常に気に掛けていただいて、応援の御答弁を何度もいただいて、また歴代の保険課長さんや保険課の事務方の方々が、個別事例含めて、おかしいことはおかしいということで大手損保を指導していただいたというようなことがあります。
マスコミも取り上げた大きな問題として、福岡のある大手損保の支社が地域の損保代理店を強制的に統廃合しようとしたということがありまして、これは国会でも取り上げましたが、金融庁の本庁が乗り込んで是正させました。で、本社も謝罪するということで、経済雑誌含めて大きく取り上げられた問題でございます。
いろんな事案があったんですけど、金融庁が真摯に対応していただいて御尽力されたんで、おかげさまでかつてのような露骨な、あからさまな代理店いじめみたいなことは随分少なくなったわけでございます。まず、金融庁の今までの御尽力に感謝を申し上げたいというふうに思います。
また、ちなみにこの問題は院内集会も開かれて、全国から百社以上の代理店が参加するという大きな院内集会も開かれて、超党派で取り組んでいただいて、自民党の西田昌司先生や国民民主党にいらっしゃった大塚耕平先生なんかが大変熱心に頑張ってもらった問題でございます。
こういう経過を踏まえて、まだまだいろんな問題ありますので、加藤大臣におかれては、この問題を初めてお聞きになって初めての御答弁になるかと思いますけれど、地域で頑張る中小代理店が不当な扱いを受けないように、引き続き金融庁として、金融担当大臣として御尽力いただきたいと思いますが、まずその点をお願いいたします。
○国務大臣(加藤勝信君) 損害保険代理店は損害保険会社と顧客をつなぐ役割を担っており、特に中小の代理店は、地域に密着をし、地域における保険ニーズを酌み取って保険商品を販売する重要な主体であると認識をしておりますし、また、そうした認識に立って、これまで麻生大臣、鈴木大臣も御答弁させていただいたものと承知をしております。
こうした代理店の役割、重要性を踏まえ、損害保険会社には、例えば代理店手数料の設定等の際にも、一方的な押し付けとならないよう、代理店の意見にしっかりと耳を傾け、丁寧な対応に努めていただきたいと考えており、これまでも金融庁は損害保険会社に対しこうした取組を繰り返し求めてきたところでありますし、また、昨年六月に取りまとめられた損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議の報告書では、中小の代理店から課題を指摘されることの多い代理店手数料ポイント制度について、損害保険会社が規模、増収に偏ることなく代理店の業務品質を重視し、業務品質の具体的な指標について、損害保険会社の事務効率化ではなく、顧客にとってのサービス向上に資する、まさに顧客本位という立場で検討すべきと提言されております。
金融庁としては、こうした有識者会議の提言について、今後、監督上の着眼点に反映しつつ、引き続き保険会社による代理店管理運営の実態の把握に努めるとともに、保険会社において今申し上げた提言を踏まえた改善が適切に図られるよう、しっかりと取組をしていきたいと考えています。
○大門実紀史君 ありがとうございます。
今大臣から御紹介があった損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議報告書の抜粋をお手元にお配りしております。
私、思いますのは、まずこの有識者会議の報告等にこの中小代理店の問題が取り上げられたことそのものが非常に画期的で、率直に申し上げて、かつての金融庁というのは、何というんですかね、中小代理店はほとんど眼中になくて、まあ大手損保と代理店は民民だというような大変冷たい対応あったんですけれども、だったんですけれども、今回は有識者報告書にきちっと入れていただいているということは非常にすごいことだなと思っております。
お手元に配りましたけれども、大臣から、以下あったとおりなんですけど、要するに、今般の保険金不正請求事案というのは、言うまでもありませんが、ビッグモーターの件でございます。で、規模や増収面を大手損保、損害会社の方がですね、大手損保の方が規模や増収面を重視して業務品質を適切かつ十分に評価していなかったと、つまり、ビッグモーターは保険販売を大規模にやってくれるからと、売上げが大きいからということで、販売方法やその中身をちゃんとチェックしていなかったということを指摘されているんだというふうに思います。
その中で、代理店ポイント制度ということが書かれておりますが、これはこの問題の一番の元凶になってきた問題でございまして、まあ非常に簡単に申し上げますと、大手損保が一方的に代理店をポイントで評価すると。ポイントで評価して支払う手数料を決めると。で、それが規模、売上げを中心にやってきましたから、大きなところ、で、去年より売上げをうんと伸ばしたところ、こういうところ評価しますので、地域で頑張っている中小代理店は地道に頑張っていても余り評価されないと。で、ビッグモーターなんかが大評価されて、中小は評価が低いと。それで、ポイントで手数料決めるので、大変中小が、中小の代理店が苦境に追い込まれてきたという、この一番の問題はこのポイント制度にあるわけでございます。
これはお手元に配っておりませんけど、東洋経済オンラインで今年の一月二十五日に、これは金融庁の幹部という形で紹介されておりますけれども、こういうことをおっしゃっています。
手数料をめぐる問題が一連の損保不正の底流にあると、この手数料をめぐる問題がいろんなことを生み出している、生んできているということですね。保険販売を専業とする小規模な代理店には厳しく効率化を迫り、容赦なく手数料ポイントを下げる、一方で、大手自動車メーカーの系列ディーラー、まあ特にビッグモーターなんかそうだったわけですけれども、には新車販売に協力したり、手数料で擦り寄ったりしながら自分たちのテリトリーを守ってきたという実態があるということで、非常にビッグモーター問題の背景にある問題、あるいは代理店の背景にある問題を鋭く指摘されているというふうに思います。
この資料の一つ目はそういうことをおっしゃっているんだと思いますけれども、二のところですね、「代理店手数料ポイント制度」と書いていますが、この「代理店手数料ポイント制度は、大手を中心とした損害保険会社が保険代理店に支払う代理店手数料を算出するために導入している枠組みであり、その仕組みや運用方法に関しては、損害保険会社と保険代理店との間の代理店委託契約に基づき、」ここが問題なんですけれども、「契約当事者間の協議・合意により決定されている。」と書かれております。
全体、いいことが書かれている報告なんですけど、この「協議・合意により決定されている。」という記述に関しては、先ほど申し上げましたいろんなことで苦しんできた現場の代理店の皆さんから異論が出されております。要するに、協議も合意もしない、一方的に決められてきたから、決められてきたのが実態ではないかと、事実と違うんではないかというふうな指摘がこの記述の部分にありますが、これは参考人で結構ですけど、この辺はどういうふうに解釈すればいいんでしょうか。
○政府参考人(伊藤豊君) お答えを申し上げます。
この有識者会議の報告書のこの今の部分でございますけれども、これは中小の代理店と委員御指摘のその大手損害保険会社との間の状況を示しているというよりも、代理店ポイント制度というのはそういうものであると、そういう仕組みであるということを述べた箇所だというふうに思っております。
それで、私どもいたしましても、先ほどから御紹介がございましたけれども、この代理店手数料体系、例えば、仕組みなりその毎年の見直しがあった場合に、損害保険会社から代理店に対して説明がなかったですとか、販売チャンネルによってその違いがあるというような指摘、その他多数の指摘、私どもも承知をしているところでございます。
○大門実紀史君 実は、私も、現場の方からそういう意見があったときにちょっと善意に解釈するといいますか、金融庁は、実はこの合意とか、協議とか合意がなかったから、その事例をいっぱい受けて是正に入ってくれたわけですから、実態としてされてない、協議、合意がされてない事例、十分に御承知ですよね。したがって、ここにあえて書かれたというのは、本来、協議、合意で決められるのは当たり前だということの意味を含めて書かれたんではないかと、したがって原則を示すという意味で書かれたんではないかと思いますので、今参考人が御答弁いただいたことは大変大事かなというふうに思っております。ですから、いずれにせよ、この表現は訂正するとかいうよりも、まさに私、生かしてほしいなと思っているところでございます。
ただですね、ただですねといいますか、今までどういうことだったのかというと、これは金融庁にもうお渡ししてありますけど、委託契約書というのがあるんですね。これはもう名前言いませんが、もう一番大きなと言ったら分かっちゃいますけど、大手損保が二〇〇〇年十月に社員向けに作成したこの契約書についての解説です。結論から言いますと、代理店手数料は会社が決めるんだということをあからさまに言っている社員向けの解説書がございます。それは冒頭、この解説は代理店には見せないでくれと、言わないでくれと、社員だけですよと。で、書いてあることは、要するに、対価の支払条件、つまり、手数料の支払の決定、変更は当社が行うものであるということをあからさまに社員向けに書いているんですね。それが実態だったわけですよね。ですから、協議、合意なんか最初から眼中になかったんでいろんな問題が起きてきたということなんですね。それを踏まえると、この有識者会議で明言していただいた意義は私は大きいなと思っております。
次の部分です。こうした観点からとありますが、こうした観点から、損害保険会社においては、代理店手数料ポイント制度について、規模、増収に隔たることなく業務品質を重視すると。業務品質の具体的な指標については、損害保険会社の業務効率化ではなく、顧客にとってのサービス向上に資するものとすると。よくぞここまで明記していただいたなと思います。
要するに、規模、増収に頼っている今のやり方は駄目だよと、大手損保に対してですね、業務品質等を重視しなさいと。その大手損保会社の中の効率化とか収益だけではなく、収益じゃなくて、顧客にとってのサービスの向上を基準にしなさいと。つまり、この顧客にとってのサービスを担っているのは紛れもなく地域の中小の専業代理店なわけでございますので、そのことを位置付けていただいたんではないかというふうに思っております。
ただ、これが出た後、これは名前言わせてもらいますが、損保協会の会長であります東京海上日動社長でもある城田さんはこんなことを言っていますね。これはダイヤモンド・オンラインのインタビューに答えていますけれども、規模、増収に隔たることなくと、あっ、ごめんなさい、偏ることなく、というのは合意いたしますと。しかし、業務品質評価基準をそのまま当てはめるというものではありません。つまり、一般的に規模、増収で決めるということはしませんけれど、当社の、各社の業務品質を重視すると。つまり、それぞれの業務の効率化あるいは収益の最大化に貢献する代理店を優遇するということは捨てないということを言っているわけでございます。
これも参考人で結構なんですけど、せっかくこういう有識者報告出して、損保協会の会長がちょっとこういう割り引くようなことを言っていますが、これ、いかがされますか。
○政府参考人(伊藤豊君) お答えを申し上げます。
今の御紹介のございました損保協会の会長の御発言は、必ずしも私ども直接把握しているわけではございませんのでコメントはいたしませんけれども、ただし、有識者会議の報告書でいただいた提言につきましては、先ほど大臣からも御答弁がありましたように、私どもとしては重く受け止めまして、今後のいろいろな制度ですとか監督行政に反映していくということは申し上げられるというふうに考えております。
○大門実紀史君 ありがとうございます。
この有識者会議報告が、今ちょっとちらっとございました、今後どのように金融庁の方針に具体化されるかなんですけれども、通常、審議会報告とか有識者報告というのは、法改正になったり監督指針の改正になったり、大体具体化されていきますよね。
考えてみれば、今までこの損害保険代理店問題というのはいろいろ頑張ってもらってきたんですけど、監督指針とかガイドラインとか、何か明文化したものなかったんですよね。それでも金融庁はこれでここまで頑張っていただいたので、是非この有識者報告を明文化、何らかの形で具体化、明文化してほしいなと私思います。
そうしないと、今のところ、麻生さんがいろいろ頑張ってくれて、その何か呪縛じゃないですけど、麻生さんの影響がかなりまだあって、かも分かりませんけど、もし何年かたって、やっぱりきちっとした監督指針とか明文化したものがないと、この後またどうなっていくか分からないと思うので、是非監督指針の中に、少なくとも協議、合意に基づく契約と、あるいは規模、増収だけで評価しないと、まあ当たり前のことでございますけど、この物差しを監督指針などに明文化してほしいと思いますが、もう一度お願いいたします。
○政府参考人(伊藤豊君) お答えを申し上げます。
この有識者会議の提言を踏まえまして、今後どのような監督対応若しくはその今委員御指摘になりましたような制度整備をしていくかということについては真摯に検討してまいりたいというふうに考えておりますけれども、やはりしっかりとした基盤に基づいて私どもも監督していく必要があるというふうに考えておりますので、引き続きしっかりとフォローしていきたいというふうに考えております。
○大門実紀史君 今参考人から方向は感じられましたけど、ここまで、要するにこれ政治主導といいますか、麻生さん以来の歴代大臣とあるいは金融庁の大変優秀な幹部といいますか、それが事態を非常に動かしてきてくれたんだと思います。
ここまで来て、次は監督指針になるかなと、法改正ではなくて監督指針かなと思いますけれども、是非これ加藤大臣のイニシアチブで具体化、できれば監督指針の改定ということに御指導いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) 先ほど申し上げましたけれども、今回の有識者会議の提言については、今後、監督上の着眼点に反映しつつということを申し上げさせていただきました。どう具体的にそれを担保していくのかというのは中でしっかり議論していかなきゃならないというふうに思いますし、同時に、保険会社による代理店管理運営の実態の把握、また保険会社における提言を踏まえた改善が適切に図られるよう、しっかりと取組をさせていただきたいと考えております。
○大門実紀史君 今監督上という言葉が出たので、信頼しております。
そもそもこの代理店ポイント制度そのものが、この制度そのものが一方的なものでございまして、民民の契約というならもっと対等、平等な契約関係が本来あるべきで、そういうものを新たに本当はつくる必要があるかというふうに思っております。そういう対等、平等な契約関係、新たな仕組み目指しながらですけど、当面、目の前で頑張る代理店を応援するために、今かなり前向きなことに踏み込まれたと私は感じ取っておりますけれど、引き続き金融庁の努力をお願いしたいと思います。
大変前向きな答弁いただいたと思っておりますので、これで終わりたいと思います。
ありがとうございました。