国会質問

● ● ● ●  大門みきし Daimon Mikishi  ● ● ● ●


■2025年3月25日 参議院 消費者問題に関する特別委員会 悪徳商法による違法収益吐き出し制度問題について

<議事録>

○大門実紀史君 大門です。
 私、消費者問題といっても、取り組んできたのはほとんど悪徳商法、悪質商法、際どい事案ばかりなんですけれども、様々な犯罪集団が、今はもうほとんど潰れて、ないんですけれども、それぞれもう解体されたりで、ないんですが、被害者にお金が返ってこないという問題がずっと残っているんですね。それについて今日質問をしたいというふうに思います。
 ですから、いろんな問題を解決、みんなで取り組んで解決するんですけど、達成感がないんですよね、被害者にお金が返ってこないから、取り組んでもですね。そういう点で、被害者にちゃんと違法に取られたお金が返ってくるということがテーマにならざるを得ないと思うんです。
 ジャパンライフでも、被害者にお金が戻ってまいりませんですね。被害者七千人で被害総額二千百億円の巨大詐欺事件ですけれども、損害賠償を求める裁判でも二億円の支払命令ということでございます。
 別に、高齢者多いんですけど、お金持ちばかりというか、お金持ちなんかそんないなくて、老後の二百万、三百万というそのぐらいのもう貯金まで全部取られて、被害の後お会いした方は、もう貯金取り崩して暮らしていたんだけど、もうその後、それもなくなったんで、生活保護で生活されるというふうな、たくさんの方が追い込まれているわけでございます。
 ジャパンライフだけじゃないんですけれども、消費者庁にもよく伺いますが、なぜ今被害者にお金が返ってこないのかということをお聞きしたいと思います。

○政府参考人(藤本武士君) お答えいたします。
 例えばマルチ商法に関しましては、特定商取引法に基づきまして、法令に違反する事業者に対しては厳正に処分を行ってまいりました。消費者庁としましては、引き続き注意喚起を行うとともに、違反事業者に対しては厳正に行政処分を行うことで、連鎖販売取引など悪徳商法による消費者被害の防止に努めているところであります。
 他方で、委員御指摘の被害財産の回復につきましては、一般論としてではありますが、悪質な詐欺的商法については、詐欺的であるがゆえに消費者が被害者意識を持つことが困難であり、その結果、行政が被害の兆候や端緒情報を得ることが難しいという面がございます。また、問題発覚後に被害救済を図ろうとしても、悪質な事業者の下にはその原資が存在しないことが多いなどの困難性があると認識をしております。

○大門実紀史君 そんなこと分かっているわけですよね。
 ちょっとジャパンライフで言っておきますと、ジャパンライフは、まずその返ってこない以前に被害を広げないという点で、この委員会で何度も取り上げましたけど、消費者庁がもっと早く手を打っていれば、あれだけ、さっきの二千億のような被害金額にはならなかったという点はこの件では何回も取り上げていますが、つまり行政の処分をきちっと早く手を打っていれば被害は広がらないというのはまず押さえておいてほしいと思います。
 その上で、今おっしゃったんですけど、要するに違法に収益を得た犯罪集団から取り戻す仕組みがないわけですよね。そういう実態だからこそ新たな仕組みが必要なんだけど、それがないわけでございます。
 それで、いろんなところでどうしたらいいかという提案がされております。消費者委員会も、二〇一八年からワーキンググループ持たれて、二〇二三年八月に報告書出されておりますね。それによれば、破綻必至商法、必至というのは必ず至るという意味ですね、破綻必至商法を対象として行政庁による破産申立て権限、違法収益剥奪のための行政手法を新設するという提案をされております。
 破綻必至商法というと、みんなそうなんですよね。最初から潰そうと思ってやっているわけですよね。できるだけお金集めて、どこか移して逃げて、潰すことを前提にやっていますので、みんな破綻必至商法なんですね。ただ、その認定が難しいとかいろいろあるんですよね。あることはあるんですけれども、そういう提案をされております。
 ただ、消費者庁にちょっと聞くと、なかなかちょっと消極的な捉え方で、いろいろあるから、まあ無理じゃないかとは言いません、言わなかったけれども、ちょっと消極的な捉え方されているのかなと思います。
 あと、神戸大学の中川丈久先生が、アメリカのMRI詐欺事件、有名な詐欺事件ありましたよね、あのときにアメリカで違法収益収奪のいろいろやったんですね。今日はもう時間ないんで細かく言いませんが、そういう、日本でもあのMRI事件でアメリカがやったような違法収益吐き出し制度をつくる研究、つくれば、つくろうと思えばできるんじゃないかという提案をされております。
 あと、ちなみに中川先生によると、基本的にこういう詐欺事件の後始末というのは民間に手に負えるものではないということですね、まず。で、その詐欺組織に対峙すべきは本来的に消費者保護行政当局と刑事当局ということ、そのとおりだと思いますよね。
 アメリカではそういったことを、この複数のチャンネルで絡み合うことで幾らかでもできるだけ被害者に返還するということが可能になったわけであります。それに比べて日本の立法府はそれぞれ自分たちだけ視野を持ってやろうとするので、いつまでたってもこれ余り進まないと。もっと複数のチャンネル、ほかの省庁とも連携してやることは必要だと。そういう立法を、新たな手法、立法が必要だというふうに、専門の、消費者庁のいろんな審議会にも来られている中川先生はおっしゃっております。
 あと、資料を一枚配りましたけれども、日弁連ですね、日弁連はもう立法提案をしております、二〇二二年に。これはどういう提案かというと、今、ジャパンライフもそうなんですが、裁判所が賠償金額を命令する、決めるわけですね。これがそもそも少な過ぎるわけですね、被害総額に対して。これ、今一定の限界があるわけですね、裁判所の決め方そのものに。
 したがって、もうこれも細かく申し上げませんが、要するに裁判所が、違法行為で収益を受け、加害者がですね、違法行為で収益を得ているという場合は、その収益の全額又は一部を含めて損害賠償額を決めることができるという、裁判所が命令する金額を増やすという形で被害者の方々に返そうという提案をされているわけでございます。
 いずれにせよ、いろんな提案がありますけれど、現段階で消費者庁は何かお考えでしょうか。

○大臣政務官(今井絵理子君) 大門先生の今日に至るまでの悪質商法に関する問題意識と国会での質疑等も拝見させていただきました。ユーチューブの「大門ゼミ」の講義も拝聴させていただきましたが、困難な問題はありますが、被害に遭われた方が救済されるよう、また、これ以上新たな被害を生まないように対策を講じることは喫緊の課題だと考えております。
 消費者庁といたしましても、悪質な商法への対応として、違法収益の剥奪とその返還という観点は重要であると認識しております。そして、これまで様々な御提言をいただいているものも承知しております。
 他方で、審議官が先ほど御答弁しましたが、悪質事業者からの違法収益の剥奪とその返還には様々な課題があります。また、行政機関が事業者に対して、例えば強制的に会社を解散させたり違法収益の納付を命ずる仕組みを講ずることは慎重な検討が必要です。
 消費者庁といたしまして、夏に向けて、取りまとめに向けて現在検討している消費者法制度のパラダイムシフトにおいて、事業者の悪質性や行為の特性に応じたグラデーションを付けた規律が重要であると考えておりまして、そうした点を踏まえて、深刻な消費者被害をもたらす悪質商法の対応に向けて、実効性のある手法等に関して真摯に調査研究を進めてまいりたいと考えております。

○大門実紀史君 パラダイムシフトという言葉が出ました。
 私もずっとこの問題やっていて、いつもモグラたたきというか後追いで、何か追い付かないわけですね。その犯罪集団をストップするのもなかなか後追いになるし、ましてやこの違法収益、被害者に返すのはもう大変なことだと。本当にそう思うと、ちょっとパラダイムといいますか、考え方全体を変えて、それに見合う何らかの立法とか手法が必要かなというふうに、こうイメージでは分かるんですけど。
 せっかく黒木審議官が来られておりますので、その辺の、黒木先生は現場で悪徳商法、かつて私と一緒に追及した、現場で頑張った弁護士さんですので、その黒木審議官が今そういうことをお考えになっているということなので、ちょっとこの具体的な現場の被害者を救うという点でどういうふうに関係するのか、少しコメントいただけますか。

○政府参考人(黒木理恵君) 御質問ありがとうございます。
 委員から御指摘いただきましたまず消費者法制度のパラダイムシフトということでございますけれども、委員からも御指摘ありましたとおり、これまで、今現在ですね、高齢化も進んでいる、あるいはデジタル化も進んでいる中で消費者を取り巻く特に取引環境、大変大きく変化をしていると、そのような中でこれまでのように対症療法的にいろんな制度を考えていくということではもう不十分ではないかという問題意識に基づいて、理念、あるいは消費者法を支える理念から抜本的に積み上げてパラダイムシフトをしていくということが必要ではないかという問題意識で今消費者庁で検討を進めているというものでございます。
 一番のポイントとしましては、若干ちょっと委員のその悪質商法に限らないということにはなりますけれども、消費者というものは、これまでの消費者法では、一般的、平均的、合理的、消費者と事業者との間には格差があるので、それを埋めていくという考え方が基本でございました。それは重要だと思いますけれども、それだけではなくて、現実の消費者は、例えば悪質商法にだまされてしまうことも含めて様々な脆弱性を持っている多様な消費者が現実に存在していると、そのことを消費者法においてこそ正面から受け止めて、どのようなことができるのかといったことを考えていく必要があるのではないかと思っております。
 今その検討は、消費者委員会の方で専門調査会をつくって御検討を進めていただいておりますけれども、その中でも、先ほど委員からも御紹介いただきました中川先生の御論文などでも指摘がされております民事、行政、刑事、様々な手法に視野を広げて、いろんな取組、組合せ、コーディネートというものを考えて、また、悪質性の度合いに応じたグラデーションのある規律という考え方が重要であると、まさにそのような考え方の下で今御検討を進めていただいていると思っておりますので、その結果も踏まえて、引き続き消費者庁としてもしっかり検討を進めてまいりたいと考えております。

○大門実紀史君 ありがとうございます。
 是非関係機関と連携も含めて頑張ってほしいと思いますし、今井政務官は障害者問題で弱者のことをずっと捉えていただいているので、これまさに一番社会的弱者といいますか、高齢者の方々の問題ですので、引き続き消費者庁として頑張っていただきたいと、それ申し上げて質問終わります。
 ありがとうございました。

○委員長(石井章君) 以上をもちまして、令和七年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、内閣府所管のうち内閣本府消費者委員会関係経費及び消費者庁についての委嘱審査は終了いたしました。

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