<議事録>
○大門実紀史君 大門でございます。
久しぶりの財政金融委員会でございますので、よろしくお願いします。
また、今日はほかの委員会重なっておりまして、質問の順番を御配慮いただきまして、各党の皆さんにお礼を申し上げておきたいと思います。ありがとうございます。
三年ぶりの財政金融委員会ですので、個別の問題というよりも、加藤財務大臣と少し大きな議論をさせていただければというふうに思います。先ほどもありましたが、失われた三十年、あるいは日本のこの資本主義のゆがみといいますかね、日本経済のゆがみというような点を議論させてもらえればと思います。
まず、ずっと指摘されてきたのは、これは我が党だけではなくて、安倍さんも麻生さんも岸田さんも石破さんも、みんな御指摘されてきた大企業のたまり過ぎている内部留保の問題でございます。
お手元に資料を用意いたしましたけれども、過去三十年で大企業の利益は十六倍に、純利益十六倍に増えております。株主への配当が十倍近くに増えておりまして、内部留保はどんどん増えて五百三十九兆円になっております。過去最大、更新しているんですね。
我が党は、別に大企業を敵視しているわけではございません。頑張ってもらいたいと思っております。ただ、社会的責任はきちっと果たすべきではないかという点で取り上げているわけでありますし、一部の、お金の使い方あるんですけれども、一般に内部留保というのは企業にとっては大変大事な蓄えのお金でございまして、いざというときに内部留保なかったら困るわけですよね。問題は、賃金を上げる約束といいますかね、上げてもらう約束で減税をしてもらったにもかかわらず、賃金を抑え込んでそれが内部留保に回る、あるいは設備投資に回らないで内部留保に回るということが、もうずっと党派超えて各党から指摘されてきたことだというふうに思います。
まず、加藤大臣は、この増え続けている内部留保についていかが捉えておられますか。一言お聞きしたいと思います。
○国務大臣(加藤勝信君) 大企業を中心として内部留保が増加している、こうした背景に当たっては、まさにこの間、企業そのものが、そしてそこで働く皆さん方の努力によって収益が増加傾向を続けてきたと。そうした、また、してきたわけでありますが、そうした中において、長年続いたコストカット型経済、海外とのコスト競争の下、生産の効率化、人件費等の抑制、海外生産の拡大に伴う営業外収益の増加、こういったこともそれに加わったものと承知をしております。
企業が、内部留保というと、これは現預金だけではなくて様々な投資等も含まれるわけでありますが、特に現預金として保有する背景には、経営危機や不測の事態に備えるための事情、また将来の設備投資などの資金としてプールしているといった点が指摘されているところであります。
多くの日本企業において長期にわたる低成長、デフレの経験などから、増加した企業収益が賃上げや国内投資に結び付かず、また増加した現預金として保有されてきた、こうした流れにあるものと認識をしておりますので、そういった意味においては、与党の税制改正大綱にもありますけれども、やはり期待していた効果として賃金の引上げあるいは投資の促進、こういったものには残念ながら十分には結び付いていないというふうに認識をしております。
○大門実紀史君 ありがとうございます。
先日、本会議でも少し申し上げましたが、私、最初にこの委員会で質問させてもらったのが宮澤喜一さんでございまして、大変優秀な方で、いろいろ教えてもらったわけでございます。ちょっと数えていないんですけど、加藤大臣は十何人目かで、ほとんど覚えていないんですけどね、大臣。忘れたくても忘れられないのは麻生財務大臣でございまして、いつも議論するときに、もうほとんど答弁書読まないで政治家としての自分の考えを御披露されて、まあ時々あらぬ方向に行ったりするんですけど、それでも大変楽しい、楽しいというか、有意義な議論をさせていただいたので、是非、今日は余り、その答弁書、事務方用意したのなんかじゃなくて、政治家としての加藤大臣のお考えを聞きたいなと思っております。
それで、次の資料がございますけれども、ため込まれた内部留保が一体何に使われているのかということなんですけど、その経営の在り方なんですけど、中段の資料なんですけど、これは財務省の法人企業統計で、うちで作りましたけれど、製造業の大企業で取ったんですが、営業利益が二〇二三年度は十六兆円、経常利益が二十九・五兆円、まあ二倍近くになっております。
もう御案内のとおり、営業利益とはいわゆる本業の利益ですね、製造業の。経常利益というのは、その本業の利益に営業外損益を加えるわけですよね。本業以外の損益を加えたものでございます。それをこのグラフで長期的に見ていただきますと、六〇年代から二〇〇〇年くらいまではほぼイコールといいますか、営業利益の方が上回るということがあったわけですが、二〇一〇年以降くらいからはですかね、逆転現象が顕著になって、現在では経常利益が営業利益を上回ると。つまり、営業外損益が本業を上回るというふうになってきているわけですね。
この理由について、これ参考人で結構ですけれど、財務省はどういうふうに理解されておりますか。
○政府参考人(小宮義之君) お尋ねのございました二〇一〇年度以降で見ますと、製造業の経常利益が営業利益を上回っている要因といたしましては、まず営業外費用の方、これには大きな変動がない一方で、営業外収益、これが増加をしているということが挙げられます。そして、この営業外収益には例えば受取配当金、それから受取利息や為替差益などが含まれておりますけれども、法人企業統計調査では、受取配当金を始めとするそれぞれの科目ごとの金額、これを把握することがかないませんことから、経常利益が営業利益を上回った主な要因がどの科目によっているのかということを一概に申し上げることは困難なところでございます。
その上であえて申し上げますと、国際収支のデータや各シンクタンクのレポート等を見ますと、やはり製造業海外直接投資、これは拡大をしております。それに伴うやはりその海外の現地の子会社等からの配当金も相応に大きくなっているというふうに理解をしております。
○大門実紀史君 ありがとうございます。
今御説明あったとおりで、営業外収益、プラスの方が増えている、それは配当が主だと。これはもちろん受取配当に対する優遇税制とかあると思うんですが、とにかく海外子会社からの配当を含めて、金融所得といいますか、そういうものが増えてきているというグラフだというふうに思います。
その一番下のグラフでございまして、大企業製造業の保有金融資産がずっと増えておりまして、御指摘いただいたとおり、子会社などの株式を保有している、その配当が先ほどの収益になっているということですね。この保有額が製造業でも、株式、公社債、その他有価証券の保有額が、比較可能なところだけで取ってみたんですけど、七五年度の七・二兆から二〇二三年度の百二十五・五兆円と急速に、急激に増加しております。そのうち株式は百・八兆円、約八割は株式ということですね。
その申し上げたいことは、この大企業は、製造業ですね、特に、内部留保金を活用して金融投資、子会社への配当だけではありません、後で申し上げますが、ほかにもありますけれど、金融投資を行ってきたと。で、内部留保そのものも、六〇年度の一・三兆から二〇二三年度は百八十七・八兆円に内部留保膨らんでおりますが、そのお金を金融投資に回してきたということがあるわけですね。つまり、本来ずうっと議論されている賃金とか将来に向けた設備投資をやってほしいんだけれども、金融投資の方に軸足を、全部とは言いませんが、かなり移してきているというふうに思うんですね。
日本の製造業の衰退についてはいろいろ指摘されておりますけれど、こういう金融で稼ごうというふうに軸足を置いてきたことが本業をおろそかにしたとは言いませんが、少し経営の、何ですかね、方向が、真面目に考える方向がちょっとゆがんできているんではないかと。私だけじゃないですが、そういうことを指摘する方いらっしゃいますが、加藤大臣はいかがお考えでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) 委員御指摘のように、その法人企業統計見ましても、製造業の金融資産、特に投資有価証券が増加しているのは事実であります。
ただ、これ短期で運用しているわけではまずなくて、長期運用ということでございますので、その中身を見ますと、内閣府の日本経済レポート二〇二三年度においても、主に国内企業による海外子会社の設立や海外企業のMアンドAが拡大してきたことによると考えられると指摘をされておりますので、市場の拡大が見込まれる海外において拠点を拡大しようとする、まさに各企業のグローバル化への対応ということが要因だと。
ただ、課題は、これ国外なんですね。だから、国内企業の国内における子会社の設立とか、国内の企業に対するMアンドAといったものも同様に広く展開していく。ただ、そのためにやっぱり国内市場が企業にとって魅力的なものでなければならなかった。残念ながら、それがこのデフレ下の中と高齢化に伴ってだんだん国内の市場が小さくなってきたということが背景にはあるんだろうと思いますけれども、そういったことも含めて、やはり賃金含めて所得を増やしていく、そしてGDPの大半を占める個人消費を拡大していき、また市場が拡大し、そして物価が、それは一方的に上がるということじゃなくて、動くことによって新たな商品を提供しやすい環境をつくっていく、こういったことが重要ではないかなというふうに考えています。
○大門実紀史君 いいですね。何か麻生さんらしくなってこられたのではないかと思いますね。
それで、その上で、確かに子会社ですから長期投資ではあるわけですけど、ちょっとそれだけではないという問題を指摘したいのが、次のページでございますね。大企業の手元資金なんですけれど、自社株買いです。これ、今問題というか、かなり問題点指摘されてきておりますね。
自社株買いというのは、もう御存じのとおりだと思うんですが、財金のメンバーはですね、企業が自分のところの会社の、自社の株を買い戻す、市場から買い戻すことですね。そうしますと、市場に出回るその自分のところの会社の株の数が減りますよね。そうすると、一株当たりの価値が上がるということで、株価が上がるわけですね。株価つり上げといいますか、に使われてきているという指摘が一つまずあるわけですね。当然もうかるのは株主でございます。これは、株主への利益還元、あるいは株価上昇を促進する手段というふうに言われております。
例えば、企業が自社株買いを行えば、いわゆるROE、資本効率、効率的に資本を使っていかに利益を上げるかというROE、これが上がるわけですね。当然上がるわけですね。株価、ROEが上がるとその会社の株を買おうとする人が増えて株価がまた上がるというようなことで、この自社株買いというのは自分の会社の株価を上げるというようなことがあるので、かつて日本では禁止されていたんですね。それが小泉政権、竹中構造改革のときに解禁されたわけでございます。
で、そのグラフですよね。過去十二年間で、アベノミクス以来で見ますと、内部留保は二百兆ぐらい増えているんですけれど、現預金は八割増ですね。自社株、自己株式が何と一六五・三%増加しております。一言申し上げれば、この現預金が八割増という、ここなんですよね。
よく内部留保を還元しろと言うと、そんな全部現金じゃないんだと。当たり前ですよね、誰だって分かっていますよね。この手元のある現金部分、これは少なくとももっと賃金に還元できるでしょうという議論をみんなしているわけでありまして、何も全部吐き出せなんて誰も言っていないわけですね。これだけ、あの麻生さんがよく言われていましたけど、こんな手持ちで現金を持っているのは能力ねえんだと、経営者としてというふうにおっしゃっていました。
まさに、この手持ちで、何といいますかね、持て余しているような現預金だったらば賃金に還元したらというようなことがあるわけでございます。それがこの現預金の部分ですね。私たちもここを還元すべきだと言っているわけであります。
で、今日のテーマの自社株、自己株式は、こうやって何とアベノミクスになって一六五%増というふうになっているわけでございます。この自社株問題というのは、もうアメリカでは相当前から問題になっていますけど、次の資料は、これNHKの最新、NHKが大和総研に聞いたんですかね、ちょっと大和総研の元の資料は見付からないんですが、NHKの取材によって出てきた、元は大和総研の資料みたいなんですが、一番新しい自社株買いのランキングということでNHKのウェブで出ております。すごい金額をみんな自分のところの株を買っていると。これ上位十社だけですけど、全体では物すごい金額ですね。
全体でいいますと、このNHKの取材のこの期間に買った、自社株買いやった企業は千百五十二社です。総額は十五兆六百三十億。過去最高の自社株買いを日本の企業がやっているわけですね。これは、この金額は二二年度が九兆五千百億でしたので、一・五倍の自社株買い。急激に今自社株買いをやっているということになります。
まず、この問題考える上で、アメリカでも問題になってきて、アメリカでは、バイデン政権、二〇二二年にインフレ抑制法ですかね、インフレ抑制法の中でこの自社株買いについて課税を始めたんですね。自社株買いの買い付け金額の一%を課税するというのをやり始めて、一%では余り効果がないということになったんで、今度は三%に上げるということをバイデンさんが表明したんですけど、ちょっとトランプ大統領になってどうなるか分かりませんが、いずれにせよ、アメリカではずっと問題になってきたんで、自社株買いに課税をするということをやったわけですね。
これも参考人の方で結構ですが、アメリカではどういう経過で、どういう問題意識でこの自社株買いに課税を始めたんでしょうか。
○政府参考人(青木孝徳君) 御質問いただきました米国における企業の自社株買いに対する一%の課税でございます。
二〇二二年導入当時、バイデン政権は導入の趣旨としてこう発表しております。企業の利益を企業幹部への支払ではなく企業の成長と生産性への投資に充てることを奨励するというふうに説明されております。
若干付け加えますと、買い戻した株式、一定年度に、買い戻した株式から新たに発行した株式を差し引いた額に対して一%を課税すると。ただし、買戻しが組織再編の一部であるようなケースですとか一定金額以下の少額のもの、そういったものは適用除外になっておりますが、そういう形で導入をされております。
本件について米国内での評価というか、についても調べてみましたが、米国の議会調査局がレポートを出しておりまして、投資機会の減少が自社株買いにつながるのか、あるいは自社株買いが投資に回せる資金を減少させるのかは容易にはなかなか判断できないというふうに記載されておりまして、米国内でも意見は様々であるというふうに承知しております。
○大門実紀史君 アメリカの話ですね。実はこれ、インフレ抑制法の中の一部なんですけど、インフレを抑えるとか、あるいはバイデン政権の社会保障に財源が必要ということもあるんですけれど、実はもっともっと大きな問題、少しだけ触れられましたけど、があるんですね、根底にあるんですね。
バイデンさんに自社株買いに対する課税を決断させたのが、今日、理事会で掲示を許可いただきましたが、このウィリアム・ラゾニックさん、マサチューセッツ大学の今名誉教授の方ですね。(資料提示)このウィリアム・ラゾニックさんの論に基づいてバイデンさんは課税を決断したということなんですね。
この本は去年の十月にやっと刊行されたんですけれど、今ベストセラーになっておりますが、日本の経営にも、日本のこの経済の在り方にも大変示唆に富んでおりますので、もし興味のある方、西田先生なんかは共感されると思いますけど、非常に大事な指摘がされている本でございます。
かいつまんで申し上げますと、このウィリアム・ラゾニックさんは、これはタイトルが「略奪される企業価値」、「略奪される企業価値」です。原題は略奪的価値抽出、価値を抽出する、取り出す、略奪的に取り出すと。プレダトリー・バリュー・エクストラクションですかね。このラゾニックさんは何を言っているかなんですけど、この方は二〇一四年にマッキンゼー賞を、マッキンゼー賞を受賞された論文がありまして、繁栄なき利益というのがあって、当時本にはならなかったんですね、日本で和訳の要約が紹介されて読んだ記憶があるんですけれど。
もう結論を申し上げますと、ちょうど、言っておきますと、そのとき二〇一四年というのはこの委員会でもいろんな方が取り上げましたが、トマ・ピケティの「二十一世紀の資本」が話題になったときなんですね。つまり、格差を是正しなきゃいけないと、資本主義おかしくなっているぞという議論があったときに、同じ年にこのラゾニックさんがマッキンゼー賞を受賞したんですね。そのときの論文が更に発展してこの本になったということなんですね。
ラゾニックさんの論文とピケティの「二十一世紀の資本」が共通しているのは、資本主義とか経済とか企業経営がもうおかしくなっているんじゃないのと、こんなに格差を広げたりですね、ということが共通の認識だったんですかね。ピケティの方はこの格差の問題をずっと取り上げたんですね。このラゾニックさんは、企業経営の在り方から資本主義のおかしさ、アメリカ経済のおかしさを指摘されたということで、共通の認識で、おかしくなっているということですね。
言いたいことは結局こういうことなんですね。略奪される企業価値というのは、企業が本来持っている将来性とか、その企業価値そのものですよね、もっと発展する可能性とか技術とか人材とか、そういうものを株主が奪っていると、お金として奪っていると、本来そういう人材投資、設備投資にしなきゃいけないものを株主が利益を奪っていると、だから会社がおかしくなっていると、経済がおかしくなっているということを主張されているわけでございまして、目先の利益だけ追いかけていると企業はもう駄目だよと、経済も駄目になっているよ、なってくるよというような、そういうことを指摘されているんですね。そのラゾニックさんは、企業経営ですから、さっき言った内部留保の在り方とか、企業の利益をどこに投資すべきかということを問題視されているわけでございます。
ちなみに、ラゾニックさんというのは別にマルクス経済学者ではありません。シュンペーターの流れをくむ方でございまして、シュンペーターというとよく竹中平蔵さんを思い出しますけど、創造的破壊と言って、シュンペーターの言葉を使って構造改革やるんだとおっしゃっていましたけれど、もう真逆ですね。このラゾニックさんは、その創造的破壊、今のこの竹中構造改革なんかは創造的破壊どころか、もう企業価値を破壊していると多分指摘されると思うんですね。ああいう言葉だけ躍りましたけれど、実は創造的破壊というのはそういう意味じゃなかったと、本当に破壊すべきは違うものだったということも指摘されていて、経済同友会にラゾニックさん呼ばれて講演されたことがあって、ちょっと読んだことございますけど、そういう方でございます。
その最大の、それから、二〇一四年ですから、十年たってこの本を出されたんですね。その意味は、今その流れでいくと、一番指摘しなきゃいけないのはこの自社株買いだと、これがアメリカをおかしくしているということで出されたんですね。
それをバイデンさんが二〇一六年に見て、何でしたかね、あれはアメリカの雑誌ですね、何だったかな、ウォール・ストリート・ジャーナルですね。エコノミスト、ウォール・ストリート・ジャーナルを見て、ああ、ごめんなさい、ウォール・ストリート、これを見て、ラゾニックさんの論文を知って、ウォール・ストリート・ジャーナルにバイデンさんが自社株は問題だというのを副大統領のときに指摘されたんですね。で、大統領になって、自分でこれに課税をしたと、そういう流れになります。
つまり、自社株買いというのは、単に株価をつり上げただけではなくて、企業が持っている価値、将来性を株主が奪い取っているという指摘をされていたわけでございますけれども、これは別に加藤さん、これをお読みになったということはない、ないですね。別に、今出たばっかりですので、是非、これから読んでもらえると思いますね。自社株買いの問題点ちょっと整理してみますと、今もちょっと申し上げましたけれども、要するに、自社株買いをやると株主還元が一番になります。すると、利益の抜き出し、本来投資すべきものを株主に与えることになります。これが企業経営をおかしくして、本来発展すべきいろんな要素を剥ぎ取ってしまうということですね。
これは、大手企業経営者にとっていいますと、本来本業で利益を上げることに頑張らなきゃいけないんですけれども、安易なんですよね。内部留保で持っているお金を、負の、負債ですよね、負債を活用してもうけようというのは安易なんですよね。そういう安易な方に経営者も流れて、本業で頑張るということがおろそかになってきているということですね。したがって、特に大企業の経営者はもう保守的な考え方になって、本業でチャレンジしてというよりも、こういうお金を回して稼ごうというふうになっているということが、おかしくなっているということですね。
経営の視点も非常に短期化してしまうという、取りあえず今期幾ら稼ぐかということになってしまって長期的な経営ができなくなっているというようなことを含めて、全体として、先ほど言われた生産拠点を海外に移すのも、取りあえずの利益を目指してやるとか、企業を切り売りするとか、そういうことばっかりになったんで、もうこの自社株買いがその最たるものだということで指摘をされているわけでございます。
もう一つは、これちょっと私の方でちょっと調べて、途中ではあるんですけれど、よく物言う株主、物言う株主の圧力で株価中心の経営と言いますけど、今やそうじゃないんですよね。経営者そのものが、大企業の経営者そのものがこの自社株買い、買った後、自分たちが取得するわけですね。そうすると、経営者も、自分の会社の将来をどうするかというよりも、自分がもうかりますから、自社株買いをもっとやろうと、株価上がれば自分はもうかるからと。自社株、買った自社株を自分たちが取得することによって自分がもうかるんで、大企業の経営者自身も、その本業での長期的な発展というよりも自社株買いに走るようになるということを指摘されているんですが、まさに今、日本でそれが起きているんではないかというふうに思うわけでございます。
そういう点で、その自社株買いというのは、うちの小池議員の質問のときですかね、いろいろ、自社株買いはいろいろあるんだというようなことをおっしゃいましたけど、実はかなり深刻な問題を自社株買いというのは表していて、このままでいいのかということの表れになっているというふうに思うんですけれども、これ、本当に加藤大臣の政治家としてのお考えでいいんですけど、こういう自社株買いにまで表れているこの経営のゆがみ、これについてはいかが思われますか。
○国務大臣(加藤勝信君) 今るる自社株買いについていろいろ御説明をいただいたところでありますが、また近年、株主への利益還元あるいはROE、自己資本利益率向上などのためにこうした自社株買いという手法が広く使われているということは承知をしているところでございます。
企業収益、これは株主にも還元していく必要が、必要だと思いますし、また将来への投資をすることが、更に言えば、長期的には株主の還元にもつながりますし、またそこの働く方々のプラスにもなるし、また人材投資ということも当然その中に含まれていくんだろうと。そういったことがバランスよく行われることが重要だということは御指摘のとおりだと思います。
〔委員長退席、理事船橋利実君着席〕
問題は、そのさっきの、主税局長からも申し上げたように、自社株買いがあるからそういったことになってしまっているのか、そういう環境ができていないから自社株買いになっているのか、その辺も含めてしっかり分析をし、我々としては、先ほど申し上げたような投資し得る環境、特に国内に対してそういう環境、これをしっかりつくっていくということ、そして、その中においてもしおっしゃるようなことがあるならば、またそれも考えていかなきゃならないと思いますが、ただ、基本的に、企業においてはその利益をどう処分するかは基本的にはその企業がまず考えていく、それをどう評価されていくのかということだと思っていますから、そこは大事にしながらも、政府としては、まずそうした投資、あるいは人材投資も含めた、これが国内において積極的に行われていけるように、税、予算も含めた対応にしっかり取り組んでいきたいというふうに考えております。
○大門実紀史君 ありがとうございます。
アメリカも恐らく、課税したら何か大きく変わるということではなくて、アメリカの企業の経営の在り方について警告を発するといいますか、そういう意味が、政治的な意味が大きかったと思いますので、そういう点で、日本でも内部留保の問題、自社株に対する政治がどう関わるかという問題を引き続き議論していきたいというふうに思います。
今日はありがとうございました。