国会質問

● ● ● ●  大門みきし Daimon Mikishi  ● ● ● ●


■2018年3月22日 参議院 財政金融委員会 深刻な引き下げ競争 大門氏「法人税減税改めよ」
<赤旗記事>

2018年3月25日(日)

深刻な引き下げ競争
大門氏「法人税減税改めよ」

(写真)大門実紀史議員

 日本共産党の大門実紀史議員は22日の参院財政金融委員会で、2018年度税制改定による法人税減税(賃上げ・投資促進税制と情報連携投資促進税制)について質問しました。

 大門議員は、今回の減税にも影響を与えたトランプ米政権の大企業減税によって、「大企業がシンガポールからアメリカへの移転を表明し、マレーシアやインドネシアが対応を迫られると報じられている」と指摘。政府の認識をただしました。麻生太郎財務相は「全体的な影響として法人税の引き下げ競争を誘発する可能性が高い」と認めました。

 大門氏は国際通貨基金(IMF)専務理事のトランプ減税批判を示し「世界の国々が引き下げ競争はいかがなものかと考えているときであり、日本政府は国際的なコンセンサス(共通認識)にしていく役割を果たすべきだ」と主張しました。

 また、大門氏は「大企業は内部留保を400兆円ため込むだけで、賃上げや投資に回っていない」として、さらなる大企業減税を批判しました。

<議事録>

○大門実紀史君 大門でございます。
 私は、今日、税法について質問と思っていたんですけれども、ちょっと少しだけ、今の議論を聞いていて森友問題触れさせてもらいたいと思います。
 太田局長、だんだん当初に比べて対応が丁寧になってきたといいますか、いろいろ調べましょうというふうになってきていいなと思っているんですけれども、辰巳議員というのはもううちのホープでございまして、超優秀な議員でございます。その辰巳議員がこの一年ごみのことばっかり調べているんですね。ごみの質問ばっかりしているんですね。なぜかというと、この問題の疑惑の一番の中心がこの土地の値引きだからなんですね。
 自民党議員の皆さんの話をこの前しましたけど、大体自民党議員の皆さんのロジックというのは、この土地取引、値引きは何のやましいところもないんだ、正当なんだ、だからいろんなことがあったって影響はないんだ、そんたくもないんだと。つまり、この土地の値引きが正当だから、あとはもう何だっていいんだ、どうだって関係ないやという論理なんですね。
 ところが、この間、大阪地検に業者が証言する、あるいは音声テープ、そして改ざん前の文書を見ると非常に微妙なことが書いてあるということで、今も辰巳議員からあったとおり、この土地取引の値引きそのものに、本当に今おかしいんじゃないかという、非常に客観的なものも含めて突き付けられているということでありますので、逆に言うと、本当に何のやましいところもないと、本当にきちっとした取引だったというならば、辰巳議員が要求した資料を速やかに、早く出していただきたいなというふうに思います。
 あと、亡くなられた近財の、近畿財務局のAさん、名前を知っておりますが、Aさんは、私、あした取り上げをさせてもらおうと思っているんですけど、例の損保代理店の、地域の頑張っている中小の損保代理店の皆さんが大手の損保にいろんなことがあっていろいろ困った目に遭ったときに、近畿財務局でそのときAさんは金融課におられたことがあったんですけれど、一生懸命、親切にその地域の損保代理店の方々の相談に乗っていただいた方で、関係者の方が大変悲しんでおられると、そういう真面目な方だったわけであります。
 そういう点でいきますと、そのAさんが常識では考えられないことがあったというようなメモを残されているということは、相当この森友問題に関わられて心労があったんではないかと、精神的なことが、追い詰められたんではないかと思います。
 そういう点でも、これから将来の財務省、財務局、もちろん今働いておられる財務局、財務省全職員のためにもそうですし、将来、これから働く職員の方のためにも、もういろんなそんたくとかいろんな配慮とかじゃなくて、きっちりきっちり物事を明らかにしてもらいたいなと、そのためにも本当に更に太田理財局長の誠実な対応を求めたいと思いますけれど、一つだけ、これは質問でお聞きしたいんですけれど、国家公務員制度改革基本法というのがございます。
 国家公務員制度改革基本法というのがありまして、その第五条に、政府は、議院内閣制の下、政治主導を強化し、国家公務員が内閣、内閣総理大臣及び各大臣を補佐する役割を適切に果たすと。そのために次に掲げる措置を講ずるものとするということでございまして、その三項にこういうことが書かれております。
 政府は、政官関係の透明化を含め、政策の立案、決定及び実施の各段階における国家公務員としての責任の所在をより明確なものとし、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資するため、次に掲げる措置を講ずるものとしてということで、さらに具体的なことが書かれているんですが、ここがポイントなんですけど、公務員ですね、職員が国会議員と接触した場合における当該接触に関する記録の作成、保存その他の管理をし、その情報を適切に公開するために必要な措置を講ずるものとすること。
 つまり、公務員が、財務省の職員なら職員が国会議員と接触した場合はその記録を作成して保存しなさいと、適切に公開するための措置も講じなさいと。この場合における当該接触が個別の事務又は事業の決定又は執行に係るものであるときは、まさに今回の森友学園の認可、国有地の売買なんですけれども、個別の事務又は事業の決定又は執行に係るものであるときは、当該接触に関する記録の適正な管理及びその情報の公開の徹底に特に留意するものとすることと、これが国家公務員制度改革基本法に書かれているわけです。
 国会議員との接触については記録を残してきちっと公開できるようにしなさいと書いてございますが、これ、太田理財局長、御存じでしたか。

○政府参考人(太田充君) 済みません、一つ一つの条文は、済みません、私が公務員として至らないということですが、きちんと覚えているわけではございませんが、いろんな意味で政と官の関係について御議論があってその法律ができたということは承知をしておりますので、そういう中で、今ほど委員がお読みいただいたその条文の一つ一つは別として、何でそういう条文ができてという考え方みたいなものは、私なりに三十何年やらせていただいてきて、その過程においてそういうことがあってそういうふうになっているというのは理解ができます。

○大門実紀史君 それを踏まえてなんですけれども、この前の書換え、私たちは改ざんだと思っていますが、書換え前、書換え後の、出してもらった資料の書換え前、あの資料だと三十二ページなんですが、要するに政治家の名前と安倍昭恵夫人の名前が出てくる部分でございます、これが全部削除されていたわけですけれども。そのところに鴻池さんの名前も出てきますよね。鴻池さんは、やっぱりこの籠池みたいな人間といつまでも付き合っているとどうかと思って途中からもうはねのけられるわけですよね、その点まだ英明だと思いますけれども。関わった議員がほかにも、平沼さんとか、名前出てくるわけですね。
 個々に、改ざん前のこの決裁文書に書かれる前に、その記録が、先ほど申し上げましたけど、実際に面接したときの記録はあってこれを書かれたというのが当然だと思うんですよね。ですから、この文書に書く基になった面会の記録、先ほどありましたけれども、そういうものが残っているはずだと思うんです、記録の作成、保存というふうになっていますから。
 その点でいきますと、私、安倍昭恵さんについては確かに伝聞のようなところもあるんですが、唯一、唯一打合せの際に、打合せの際に籠池、私は本当に、西田さんが言われるとおり、もう籠池さんというのはろくなものじゃないと思っていますよ、私も、その上で言っているんですけれども、そうはいっても一人の人間が証言しているわけでありますので、その打合せの際に、夫人からはいい土地ですから前に進めてくださいとお言葉をいただいたと、まあ勝手に使っているかどうかは別としてね。いずれにせよ、そういうことと、写真を提示したと。これは、ここにはこう記録ありますけど、この基になった、籠池氏とこのときにこういうやり取りでこういうことを言ったとか、これも当然、基の記録はあると思うんですよね。
 ここに書かれている政治家、政治家は特に保存しなきゃいけないとなっていますから、これは公開してもらうしかないんですけれども。この前の発言によりますと、大体政治家の皆さんが言ったことはほとんど実現していませんよね、ちょっと紹介したぐらいの、平沼さんのところぐらいです。そういう点。それと、総理夫人というのは重いという答弁もありましたから、当然これに書く前の記録はあると思うんですよね。それは法律に基づいても出してもらわなきゃいけないと思いますけれど、至急調べて出してほしいんですけれど、いかがでしょうか。

○政府参考人(太田充君) お答えを申し上げます。
 まず、こういう、委員がおっしゃったように、私もちゃんと分かっていなくて大変恐縮でしたが、そういう法律があってということはよく分かりました。その上で、こういうことについて、面接の記録を残しているはずだと、あるいは残していなきゃいけないはずだという御下問でした。
 おっしゃることは分かりますが、もう一度、突然の質問なので確認はしないといけないですが、私のこれまでの答弁させていただいた、そのときの参考にさせていただいている答弁書を頭に入れている限りでいえば、基本的にこういうものは事案終了後、基本的には一年未満のはず。それはなぜかといえば、まさにこの決裁の経緯のところに大事なことを集約をして書くということにおいてそうだということがこれまでの基本的なルールだと思います。
 その上で、ただ、今委員おっしゃったことは他の委員会でも御指摘をいただいていて、それは、我々も要するにこういう書換えということが起きてしまっている以上、その書換えというものがどこからそれが探し出せたかといえば、個人的に手控えと持っていたもの、それが紙であったりあるいはパソコンの中に個人データであったりということだったことは事実でございますので、そういう中で、およそこれまで申し上げてきたようなルールに従えばないはずのものはないと言い切って、それが絶対だと、こういう状況を生じている中でそれが絶対だと断言することはできないだろうと、既にそうでないことが生じておりますので、そういう意味で、それは調べなければいけないという強い意志を持っているというふうに申し上げております。
 ただ、今、この十四の文書及びそれが、今日の質疑でもありましたけど、何の目的で誰がどうやってということをまず調べよ、これはこちらが悪いので言えた義理では全くないんですが、十四の文書についても、その後、一枚、一枚とやや追加的に発見して、あるいは追加的なところを発見してというようなことが生じていますので、まずこの書換え及びそれが何の目的でというのをきちんとやらせていただいた上で、その上で、もちろんゆっくりやるなんというつもりもありませんので、そういう調べもやらないといけないというふうに思っているということは申し上げさせていただきたいというふうに思っております。

○大門実紀史君 毎日朝方まで仕事されているのも知っておりますので無理を言うつもりではないんですけれど、非常に重要なところでありますので、ほかの課の応援も得て速やかに出してほしいなと思います。
 もう一つは、手控えとかいろんなところから出てくるという意味なんですけど、そもそもなぜこの改ざん前のこういう記述が何のために書かれたのかと。
 そのAさんの話ではありませんけれど、近畿財務局の方々というのは本当にそんな政治判断をするとか何かじゃなくって、地道に、特に国有財産の方々というのは地道に本当に作業されている、仕事してきた人、そういう人々、そういうポジションでありますし、そういう方ばかりだと思うんですね。そういう方々が、ここはちょっと推測も入るかも分かりませんけれど、今までにない処理をしたと、いかがなものかという気持ちとか、あるいは後々、近畿財務局としては、近畿財務局だけでこういうことをやったのではないとか、あるいは個々にはこういうふうなことが実は背景としてあったんだと、その関係は述べられないけれどもというような、何といいますかね、近畿財務局の最後のプライドといいますか、思いを込めてこういう文書を残したのではないかなというふうに、私も近畿財務局には何回か行っていますけれど、思うわけですね。
 そういう点でいきますと、それを削らせた本省があって、だったらもし削られて後々何かあったら全部近畿財務局の責任にされるんじゃないかというようなこととか、いろんな思いが人間ですからありますから、人一人死んでいるわけですから、そういう点でいきますと、手控えも含めてどなたかがそういう資料を持っておられるということもあり得るわけですね、ここまで来ると。そういう点も含めて、冒頭申し上げましたけれど、本当に本気で、後々の歴史に禍根を残さないためにきちっとした結果を出すというためにも、どこにも遠慮することなく調査をきちっとやってほしいということだけ今日のところはまた申し上げておきますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、税制、税法の質問に入ります。
 まず、今回の税制の、ちょっと背景いろいろあるんですけれど、一つの背景として、アメリカのトランプ政権による、本当に特異な政権でありまして、自国さえ良ければいいというような、ちょっと何だというような政権なんですけれども、とにかくそのトランプ政権が実効税率二一%に企業減税持っていくというようなことが一つ背景にあるんだろうというふうに思っているところでございます。
 ところが、このトランプさんの法人税減税の話というのは大変各国に影響を与えておりまして、日本にも影響を与えたわけですけれども、特にアジアの国々に対して大きな困った影響を与えております。新聞報道でもされておりますけれども、シンガポールにある企業は、これからアメリカに拠点を移すと。シンガポールという国は企業誘致でもっている国ですから、こんなことやられるとどんどん外に出ちゃうわけですよね。そういうことで、新聞報道によりますと、シンガポールがこのトランプ減税の影響を受けて岐路に立たされていると。あるいはマレーシアも、二一%より高い二四%ですよね。インドネシアは二五%ですよね。こういう国々がアメリカのトランプ減税に引っ張られて、法人税を下げなきゃというふうなことで、困った方向に行っていると。
 といいますのは、アジア諸国というのは日本だけでありませんで急速な高齢化が進んでおりまして、そのために社会保障等々の財源が必要になってきております。シンガポールは消費税の引上げをやったりしているわけですよね。タイとかインドネシアでも、高齢化の財源をつくるためにたばこ税を引き上げるというようなことをやってきて、財源確保するのに必死になって国民増税をお願いしてやってきているところに、このトランプ減税で法人税を下げなきゃとなるとまた国の税収が減るということで、発展途上国といいますか、アジアの国々なんかは、このトランプ減税で大変悪い影響といいますかね、困った影響を与えられているというふうに報道はされております。
 このトランプ減税というのは一体何なのかと。こういうほかの国を困らせるような、私とんでもない減税だと思っておりますけれども、特にアジアの国々に対してこういう影響を与えていることについて、アジアのトップリーダーであります日本としてどう考えるかってあると思うんですが、麻生大臣のお考えをお聞きしたいというふうに思います。

○国務大臣(麻生太郎君) これは、大門先生、他国の税制政策についてこちらの方からコメントをするというのはちょっと差し控えないかぬところだと思いますけれども、少なくとも、今言われましたように、この種の話は、アメリカにとりまして、今度アメリカの立場に立てば、アメリカの貿易収支は大赤字、その半分以上がアジア。日本を入れますと、もう日本が約九%ぐらい。ドイツ、メキシコを足して、九%、九%ぐらいと、日本とメキシコ、ドイツの対米貿易黒字がほぼ九%で並んでいると思いますが、その他が大体ほとんどアメリカに対しては、中国を筆頭に、中国は四十何%ぐらい行っている、もう五〇%ぐらい行っていると思いますが、そういったものを含めまして、対米貿易黒字というのは多いというのは事実としてあるんですが、そういうものを含めまして、今この種の話の影響がどう出てくるかと言われれば、これは多分全体的な影響としては、法人税の引下げ競争というのを誘発する可能性が高いということなんだと思います。
 きっかけは多分イギリスの二〇%、あれが一番私どもとしてはきっかけになられたと。三年前か、そういうのがきっかけで、オズボーンだったですかね、オズボーンという人のときにあれが始まったのが最初だったと思いますが、きっかけになりまして、いろいろ引下げ競争になって、残っていたのがドイツと日本ぐらいだったと思いますが。
 それが今、今回のようになりますと、これはちょっとほかの国としても引下げ競争になり得るということになりますので、日本としては、これは他の国にとりましても、これは一国の影響が極めて大きいアメリカの話ですから、ちょっとほかの国も協調してこの種の話をどうにかするという話をしなきゃいかぬというので、前に税源浸食と移動という、BEPSというプログラムを五年前に日本が提案して、おかげさまで成功しておりますけれども、これがきちんとしてアメリカでまだ批准されておりませんから、そういった意味では、ここのところを含めまして、アメリカとの関係でいきますと、日本だけというのではなくて、少なくともヨーロッパの国々等々と組んで、この話の与える影響等々に関しましては十分な検討をさせていただかないと、これは各国にとりまして、いわゆる税源が浸食される、いわゆるBEPSなどとは違った別の意味で税源が浸食されることになりますので、その意味では、これは大きな関心を持って共同で対応せないかぬところだろうと思っております。

○大門実紀史君 ありがとうございます。
 こういう中で、韓国は企業増税に踏み出しております。これ、韓国の経営者団体が反対する中ですけど、企業増税に踏み出して、サムスン電機とか現代自動車なんかは数百億円規模の増税になるというようなことになっております。ただ増税すればいい、いいと言っているわけじゃないんですけれど、どんどん際限のない引下げ競争をやっていると大変なことになるのではないかという点です。
 この委員会で私も何回か評価も含めて触れさせてもらいましたけど、二〇一三年のときに財務官のOECD租税委員会委員長だった浅川さんが大変頑張られたことも承知しております。ただ、あのとき浅川さんが日経新聞インタビューでこんなことをおっしゃっているんですね。課税権は国家主権の最たるものと述べつつ、行き過ぎたやっぱり法人税率の引下げが各国の経済にとって無害ではないという意識は共通しているということで、総理も本会議でおっしゃっていましたけれども、課税権というのはそれぞれの国の課税の判断だと。
 しかし、この競争は本当に止めなければいけないという問題意識は浅川さんも持っておられましたし、この前ですとIMFのラガルド専務理事もアメリカ自身がトランプ減税によって国家財政が大変なことになるということをおっしゃっていますし、IMFの財務局次長のマイケル・キーンさんもこの前、去年、論文を発表されたんですけれども、もう具体的に法人税の引下げ競争をやめさせるために国際協調が必要だと。日本に来られたこともありますけれども、そのときにこのマイケル・キーンさんは、日本のような重要な経済国で税率が変わった場合、これは日本が下げた場合という意味でおっしゃったんですけれども、ほかの国にどう影響を与えるかを十分考えてもらう必要があるということも述べておられた方でございます。今年のIMF・世界銀行の年次総会でも減税競争の問題について議題にしていくというようなこともおっしゃっているわけであります。
 そういう点で、日本も、日本だけが言い出して孤立するという話ではありませんので、世界の国々がみんな引下げ競争いかがなものかと考えているときでありますので、堂々と、特にトランプ政権というのはちょっとまともじゃありませんから、もうやっぱりきちっとおかしいと言うことが、かえってそれが世界的な本当にコンセンサスになっていくと思いますので、そういう役割を果たしていただきたいということを引き続き求めておきます。
 もう一つは、今回、法人税改正の中身なんですけれども、目玉は二つかなと思うんですけど、賃上げ、投資を促進するための税制と、情報連携投資を促進するための税制、この二つの税制だと思うんですけど、この概要と減税額ですね、大企業分と中小企業分の内訳を分かりやすく簡潔に述べていただけますか。

○政府参考人(星野次彦君) お答え申し上げます。
 御指摘の賃上げ税制と情報連携投資促進税制でございます。
 まず、賃上げ税制でございますけれども、中身といたしましては、賃金の引上げにつきまして、平成二十四年度に比べて一定以上の増加をという要件に代えまして、前年度に比べて賃金を三%以上引き上げるという要件に変える、それから、生産性の維持向上のために一定以上の国内設備投資を行うことを要件に税額控除が受けられるという制度にしたわけでございます。中小企業につきましては、所得拡大促進税制の見直しにおきましては、前年度から一・五%以上の賃金引上げで足りることとし、設備投資要件は設けないということで、大企業と比べて一定の配慮を行っているところでございます。
 大企業向けの賃金引上げ及び投資の促進に係る税制の減収額につきましては、千六百十億円程度を見込んでおります。所得拡大促進税制の廃止、見直しに伴います増収額が一方で立っておりまして、これが千七百四十億円程度でございまして、ネットで百三十億円程度の増収ということでございます。
 中小企業向けの所得拡大促進税制の減収額につきましては、約二千億円程度の減収を見込んでおりますけれども、これも一部要件の見直しによる増収とネットアウトをいたしますと、ほぼ三十年度改正による改正増減収はゼロに近いというふうに見込んでおります。
 なお、所得拡大促進税制につきましては、二十七年度、二十九年度改正におきまして中小企業向けの適用要件等の緩和を進めてきた結果、その減収額や適用額、これが大企業分に比べまして中小企業分がかなり拡大してきているところでございまして、三十年度改正におきましては、それをベースに税収中立の方針の下で中小企業向けの要件等を見直しているところでございます。
 次に、情報連携投資等の促進に係る税制でございますけれども、これは、企業の内外におけるデータを連携すること等によりまして生産性の向上を図るなど、経産省が所管する法律が定める要件を満たすものとして認定された計画に基づく投資につきまして、特別償却又は税額控除を認めるものでございます。減収額につきましては百三十億円程度と見込んでおりまして、内訳としては、大企業について、ほとんどでございます百三十億円程度、中小企業につきましては数億円の減税でございますけれども、四捨五入するとほぼゼロということで見込んでおります。大企業につきましては、先ほど申し上げたとおり、所得拡大促進税制の増収百三十億円と合わせれば、おおむね税収中立となる見込みでございます。
 なお、本税制の減収額につきましては、大企業が大半を占める形になっておりますけれども、当該税制はある意味、協業分担関係にございます企業群が企業間で情報連携を行うことによりまして、大企業、中小企業の枠組みを超えて、全体として生産性、効率性の向上をさせることを狙いとするものでございますので、この制度を呼び水として、中小企業にとっても、中小企業向けその他の投資減税を活用すること等によって、かなりメリットが得られるものと考えているところでございます。

○大門実紀史君 ありがとうございます。
 まず、ちょっとそもそも論なんですけど、この賃上げ投資促進税制、もう全て大企業向けですね、この千六百十億円に関して言えば。もうこの五年間ずっと、麻生大臣の問題意識も私たちも共有して、内部留保がどんどんたまっていくのに全然賃金とか投資に回らないということで、これ何とかしなきゃとあったんですけど、何もこういう税制支援をしなくとも、しかもこの税制で賃上げを支援するというのはなかなか効果が難しくて、後追いで御褒美的に、インセンティブになるのかどうかですね、後追い的なものじゃないかというような議論とかあって、そもそも効果はちょっとはっきりしないんですけれど、それにしても、四百兆を超える内部留保があるのにもかかわらずわざわざこうやって税制の支援する必要があるのかというふうな素朴な疑問があるんですけれど、麻生大臣、いかがお考えですか。

○国務大臣(麻生太郎君) これは度々大門先生といろんな場面で話をさせていただいたことがあるんですが、まず最初に、今回の法人税率の引下げに関しましては、これは単なる減税というわけではなくて、今局長というか星野の方から御説明申し上げましたけれども、課税ベースの拡大によって財源というものをしっかり確保しながら法人実効税率を二〇%というラインまで引き下げるという点が一点。それから、法人課税というのをより広く負担を分かち合うという構造へと改革するということもありますので、企業の収益力拡大に向けた前向きな投資方向にこれを促していくものになるのではないかと、基本的にそう思っております。
 他方で、今おっしゃいましたように、四百兆と。これは、現預金は二百二十八兆ぐらい行っているかな、だから五五%ぐらいにこれ現預金は行っておるわけですから、そういった意味では、手元資金が増えているという状況なんですが、経済界のマインドというものを、これなかなか、変えてもらわにゃいかぬというところなんだと思うんですが。
 少しずつ見えてきているのは、そこに自動車総連の方いらっしゃいますけれども、自動車総連は、これは今年たしかトヨタは改正率、賃上げ二・八だったかな、金曜に出されたんだけど、回答は三・二書いていますわね、たしか。だから、組合が要求したより返答の方が大きかったという額になっているというのは、明らかに企業側の意識が少しは変わってきている、少しはですよ、少しは変わってきているんじゃないかなという感じがしないでもありません。これ、だけど、企業の経営者によって対応が違いますので、全体としてそういった流れになってきているかどうかというのはいま一つよく分かりませんが。
 いずれにしても、賃金引上げなどというものは、これ積極的に取り組んでもらわぬとどうにもなりませんので、今申し上げたようなことを、トヨタを例に引きましたけれども、そういった形で少しずつ変わりつつあるのが目に見えてきているかなとは思っております。
 いずれにしても、今回税制改正において、設備投資とかいろんな形で積極的なものが出てこないと、先ほどの話じゃありませんけど、国内の設備投資というのが出てこないとなかなか、いわゆる賃金、加えて雇用の維持等々、GDP、GNIじゃなくてGDPの方が増えてこないということになりますので、そういった意味では取組というのは引き続きやっていかないかぬのですけど、やっぱり企業収益というのは過去最高ですから、そういったときにこそこういったことはやりやすい状況にあるんじゃないかなと思っておりますので。
 いずれにしても、生産性を向上させるということには、やっぱり企業は長いこと設備投資を抑えてきていますから、そういった意味では、今、生産性を上げるための、いろんな意味では、AIとかITとかロボットとかいろんなものが一挙に出てきていますので、そういったものに対する設備投資によって生産性が上がり、もってそれによって賃金ととなるでしょうし、労働分配率の向上にもつながっていくだろうというように考えていますので、いろんなことを考えて、これ一発やれば必ずこうなるというようなものではないというのは一つ御理解をいただければと思っております。

○大門実紀史君 一言、あとは次回にいたしますが。
 増収、減収、つまりあれですね、千六百十と百三十足して千七百四十が減税だけど、下の千七百四十分は制度が終わるんで増税になるんで、増税と減税が中立になるというような、これちょっとトリックだと思うんですよね。つまり、今まで所得拡大促進税制で減税をしてきて、違う形で更に減税をするということなんですよね。だから、それは一遍入ったかどうかとか勝手に計算すればそういうふうなこともあるかも分かりませんが、これは大企業向けの減税の継続というふうに見るのが普通じゃないかと思いますので、その点も含めて次回、税法の議論を続けたいと思います。
 今日は終わります。ありがとうございました。

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